【世界の主要観光局に聞いたアフターコロナの観光のありかた】第4回タイ国政府観光庁 タイのホスピタリティ、ウエルネスをぜひ体験しにお越しください!

公開日 : 2021年11月13日
最終更新 :
セークサン・スィープライワン氏
セークサン・スィープライワン氏

ウィズコロナに向けて、国内外の旅行に関するニュースが活発になってきています。この連載では、世界の主要観光局に自国のコロナの状況やその間の政治的な動き、旅行に関する施策を聞いていきます。第4回はタイです。

タイは、2021年11月1日から開始している隔離措置免除認定国を発表するなど、海外旅行の再開に向けてさまざまなプログラムを開始しています。7月からすでに実施している特定の条件下での隔離免除措置「サンドボックス・プログラム」や、タイ版のGo Toトラベルのような「We Travel Together」など。ほかにも環境に配慮した新しいスタイルの観光や、ゴルフ場での隔離期間滞在、ワーケーションなど、今お伝えしたいタイの観光に関する取り組みを紹介します。

話し手:タイ国政府観光庁 所長 セークサン・スィープライワン氏
聞き手:地球の歩き方総合研究所

※インタビューは2021年10月14日に実施されました。そのため、現在の現地状況と異なる部分があること予めご了承ください。また、文中(文末)に一部、現時点の状況補足をしています。

タイのコロナ感染現状やワクチン接種率について

タイのコロナ感染現状やワクチン接種率について
バンコク市内、ウイークエンドマーケット(通常時)

Q1.最初に、タイでの新型コロナウイルスの影響についてお聞かせください。

ほかの国と同じように、急にお客様・旅行需要がなくなってしまったので、どの旅行会社もたいへんな影響を受けました。
1年半以上もの間、海外からのお客様がいなくなり、宿泊施設や航空会社やバスなどの交通機関、そして現地で案内をしてくれるガイドさんたちにとっても大きなダメージの期間が続きました。政府からの支援金もありましたが、彼らはキャッシュフローを生み出すために、仕事の仕方やビジネスモデル・業態を変えようと、一生懸命に努力しています。

ロックダウン中は多くのホテルが屋外にレストランをつくるなどして、ストリートフードを提供していました。また、フードパンダ、グラブフードなどのデリバリーサービス、テイクアウトはタイの人々に活用されていて、さまざまなレストランのメニューを利用することができました。
デリバリーやテイクアウトは続いていますが、ホテルの方は国内旅行が動き出していることもあり、屋外での提供をしているところは少なくなってきています。

Q2.ワクチン接種の状況はいかがですか?

観光業に限ってお話をするとプーケット、サムイはすでに旅行客を受け入れていて、今後、バンコク、チェンマイ、パタヤーなどにも広げていきます。
また、タイには観光業に関する独自の衛生基準=SHA認定プログラムがあり、これに入っているホテル、旅行会社、レストランなど、約4000団体の業務に従事しているスタッフの7~8割はすでに2回のワクチン接種を終了しています。

隔離免除のサンドボックス・プログラムや、旅行をサポートするWe Travel Togetherとは?

隔離免除のサンドボックス・プログラムや、旅行をサポートするWe Travel Togetherとは?
プーケット・パトンビーチ

Q3.日本でも大きく報道された2021年11月1日から実施している隔離措置免除認定国(10ヵ国)についてですが、日本が追加される日が待ち遠しいですね。

日本は保健省が定めている分類でミディアムに分類されていて、残念ながらこのリストには入りませんでした。しかし、現在の日本の状況をみても、近いうちにそのランクは
低リスクレベルに下がり、このリストも改定されるでしょう。もうしばらくお待ちください(※)。

※10月22日に新しいリストが発表され、日本も隔離措置免除国に認定されています

サムイ・チャウエンビーチ
サムイ・チャウエンビーチ

Q4.タイの観光地への影響や現状はいかがですか?

7月から実施している「サンドボックス・プログラム(※)」という特別プログラムで、海外からの観光客の受け入れも開始しました。日本の方もわずかですが利用をいただいています。
また、タイ国内の旅行に関しては日本の「Go Toトラベル」のようなキャンペーン、「We Travel Together」の実施を予定しています。これはスマートフォンなどから登録をして、旅行代金などのサポートをするプログラムです。
海外からの観光客については、アセアン各国をはじめ近隣からの再開が最初になります。距離的に近く陸路または空路で入国できるところから交流再開を始めていくことになるでしょう。まずは、国内を最初に始め、そのあと海外からのお客様という流れになっていきます。

タイ滞在時はアプリを活用していただいています。タイへの入国許可書を取得する際にはワクチン接種証明が必要です。タイの空港に到着した際に、このアプリ(タイランドプラス[Thailand Plus]、モーチャナ[MorChana])をダウンロードしていただきます。このアプリは位置情報や接触情報などを記録していきますが、観光施設やレストランなどではこのアプリを提示いただき入場する、という流れになっています。

※サンドボックス・プログラム:通常はタイ入国後一定の隔離期間が必要なところ、プーケット・サムイ島、パガン島、タオ島に限り、出発前に、1)入国証明書の申請と取得、2)ワクチン接種証明書、3)専用ウェブでの登録、4)航空券の手配、SHA+認定を取得した宿泊施設の予約、海外旅行保険への加入などをして、到着後PCR検査が陰性などの条件が整えば、その隔離が免除されるという画期的な取り組みです。
プーケット県のサンドボックス・プログラムは「プーケット・サンドボックス」、スラーターニー県のサンドボックス・プログラムは「サムイ・プラス・サンドボックス」と呼ばれています。詳細・最新情報はこちらをご覧ください(https://www.thailandtravel.or.jp/phuket-sandbox/

観光×環境保全=タイの新しい観光スタイル

観光×環境保全=タイの新しい観光スタイル
閉鎖前のマヤ湾

Q5.今後の観光戦略・ロードマップはどうお考えですか?

11月から規制が緩和され、「ロー」リスクの10ヵ国からバンコクへ隔離なしの入国が始まりました。そして、12月頃から市内では娯楽施設、エンターテインメントやレストランなどでの規制緩和も始まる予定です。この後、感染者数がさほど増えなければ、旅行者がバンコクから他都市へ渡航することも可能になる地域が増えていくはずです。年末には、何らかのイベントも開催できれば、と考えています。

また、ほかの観光局と同様にKPI(重要な指標)の見直しをしています。これまでは訪問者数でしたが、これからは量ではなく旅行者の質が重要になっていくと考えています。一例を挙げれば、タイにおける消費の額、滞在日数、環境に配慮した活動、自身の体験を広くシェアしてくれる人など、こういう視点で検討していきます。
コロナ前、オーバーツーリズムは世界中で発生し、一部の自然やコミュニティを破壊してきたことも事実です。タイではこのコロナ禍で、海がキレイになり、本来の自然が戻ってきました。私たちの価値を維持するという観点も重要になってくると考えています。
ピピ島のマヤ湾を閉鎖し、訪問人数や船の数を制限したことで、自然が復活することを学んできました。自然環境を保護していくことも同時に進めなければなりません。
8月からは、国立公園へ化学物質を配合した日焼け止めの持ち込み・使用が禁止となりました。これはサンゴ礁などの海洋環境を保全していくためです。

観光を通じて、コミュニティとのつながりを作っていく
観光を通じて、コミュニティとのつながりを作っていく

コロナ前よりCommunity Based Tourismという考え方も進めてきました。持続可能な観光のゴールとして掲げているもので、順調に進んでいます。
一例を挙げれば、地元の人たちとともにマングローブの保全や植樹活動、それらの成長過程などを一緒に学ぶということを進めています。海洋保全は地元の人、とくに漁業従事者にとっても非常に重要なことです。観光客がアクティビティとして参加できるメニューを用意し、参加してもらい、生態系を学び、一緒に守っていく。
今後はこのような活動のツアープログラムを日本の旅行会社と創っていきたいと考えています。

ワーケーションやこれからの観光、話題の観光スポットについて

ワーケーションやこれからの観光、話題の観光スポットについて
ウエルネスをさらにPRしていく

Q6.今後PRしたい新しいテーマはどういったことがありますか?

日本人の平均滞在日数は5~10日間です。この滞在期間をどう延ばしていくかが、重要なテーマです。ウエルネスを前面に打ち出し、タイのサービスとホスピタリティ、特別なおもてなしといったことをPRしていきます。例えばスパやマッサージなどのように、滞在中に楽しめ、何度もリピートしてもらえるようなプログラム・商品を多く発表していきます。

全世界対象では、「イーブン・モア・アメイジングタイランド」をテーマにしたTVコマーシャルも実施しています。全体的にはオンラインプロモーションに移行していて、SNSのキャンペーンもそのタグラインやコンテンツ、キャッチコピーはそれぞれの国に合わせてやっています。
日本ではTwitterやInstagram、Facebook、LINEはもちろん、TikTokなども活用して、デジタルプロモーションを展開しています。多くのパートナーとともに日本マーケットに合うようにコンテンツを編集しながらPRしていく予定です。

イーブン・モア・アメージング・タイランドのCM動画

Q7.ワーケーション先としてのタイについて教えてください。

コロナ前からデジタルノマドといわれる人たちは、バンコク、チェンマイ、プーケットなどに1ヵ月くらい滞在してワーケーションをしていました。
滞在施設では高速インターネットやファシリティの整備をしており、場所としてもビーチリゾートや山岳地帯などさまざまなエリアがあり、滞在先の選択肢も豊富です。
また、これまでこういったワークスペースでは、国際的なコミュニティができ、人々との交流が図られていました。地域の人たちと接する、アクティビティを体験するといったことです。またタイは滞在のコストも比較的リーズナブルに済みます。
今後はワーケーション先として、このようなタイの優位性をもっと訴求していき、IT関連の方はもちろん、ゲーマー、eスポーツをやっている人たちにも伝えていきたいと考えています。

Q8.これからオープン予定の観光スポットもたくさんあるかと思いますが、来年拡張工事を終了して新しくオープンする都会のなかの自然豊かなベンジャキティ公園について教えてください。

ベンジャキティ公園(Benchakitti Park)ですね。バンコクの中心部ルンビニー公園の近くにあり、ジョギングやヨガなどを楽しめ、サイクリングルートなども完備した広い公園でタイの人たちにとても人気があります。
また、いわゆる園内には「インスタ映え」するスポットも多く、写真撮影の場所としてもにぎわっています。

ベンジャキティ公園にもぜひ訪れたい
ベンジャキティ公園にもぜひ訪れたい

日本へのメッセージ

日本へのメッセージ
タイでのゴルフもPRに力を入れる

Q9.日本との交流再開に向けてのプランはいかがでしょうか?

来年2022年は日タイ修好135年になります。このなかでいろいろな交流、例えば地域同士の交流やスポーツを通じての交流など、最初は限られたところかもしれませんが、徐々に再開していきたいと考えています。また、日本の観光庁や日本旅行業協会、日本政府観光局とも連携しながら進めていきたいと思います。

Q10.日本へのプロモーションはどうお考えですか?

残念ながら予算も限られているので、対象マーケットを分けて進めていくことになります。
1つ目に考えているのはビジネス旅行者です。ご存じのようにタイには多くの日本企業が進出しており、投資も莫大なものがあります。まずは彼らのビジネス出張を旅行会社とともに再開することから始めたい。
昨年はゴルフ場に滞在して、ゴルフも楽しみながら入国後の隔離期間を過ごしてもらうことをプロモーションとして始めていました。ビジネス出張とゴルフは密接に関連があるので、彼らに向けてタイでのゴルフをよりプロモーションしていきたいですね。

2つ目としては、先ほどお話ししたサンドボックス・プログラムです。ワクチン接種が進み、感染者が減少してきたころから始めすでに4ヵ月ほどが経ちました。これからのターゲットとしてはシニアのマーケットや長期滞在を考えている方々を狙っています。旅行会社の方々から体験者を募り、このプログラムの体験談発表などを通してメリットをPRしていきます。

若い世代やFIT(海外個人旅行)で来ていただける方々については、ワクチン接種がもっと進む、来年の1月か春先くらいからのプロモーションになると思います。この層はダイレクトブッキングで来られる方が非常に多いので、OTAなどを経由してアクセスの利便性を、またビーチリゾートなど直行便がないところは旅行会社とともにPRをしていく予定です。

プーケット・オールドタウン
プーケット・オールドタウン

Q11.最後に地球の歩き方読者へのメッセージをお願いします。

日本の人たちのこれまでの温かい支援に本当に感謝しています。
すでにワクチン接種を終えられた方は、サンドボックス・プログラムを活用して、ぜひ訪問をご検討ください。
次の目的地リストにタイを入れていただき、日本での規制も緩和され国境が開いたら、タイでのリラックスした、幸せで健康な滞在を楽しみに、そしてタイの人たちの温かいホスピタリティを感じにいらしてください。皆様のお越しを心からお待ちしております。

写真提供:タイ国政府観光庁

■タイの観光情報
・タイ国政府観光庁: https://www.thailandtravel.or.jp/

■地球の歩き方総合研究所
・URL:  http://www.arukikata.co.jp/research/report01.html

※当記事は、2021年11月12日現在のものです

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

【記載内容について】

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