メキシコの治安と安全対策・旅する際の注意点まとめ

公開日 : 2020年02月18日
最終更新 :
カンクンから日帰りでも行ける世界遺産のチチェン・イッツァ遺跡
カンクンから日帰りでも行ける世界遺産のチチェン・イッツァ遺跡

古代遺跡やコロニアル都市など、2020年時点で計35の世界遺産を有するメキシコ。この国を訪れる観光客は年間3900万人を超え、日本人の渡航者も年間15万人以上と観光立国を実現しています。全日空とアエロメヒコ航空が、成田からメキシコ・シティまで毎日1便ずつ直行便を運航しており、日本からのアクセスもよい国です。

メキシコの治安情報

メキシコの治安情報
都市部の繁華街は警察官が配備されている

総面積が日本の約5倍あるメキシコは、治安の良し悪しが地方によって異なります。基本的には治安の良い国ですが、悪い所では、日本の外務省が注意喚起する「渡航は止めてください(渡航中止勧告)」という危険度レベル3の地方も。また同じ都市内でも、安全な場所と危険な区域が存在しています。観光客が多い場所は安全度が高いので、メキシコ国内を旅行するうえで、危険な地方や区域に立ち入らないなど注意を怠らなければ、被害に遭う可能性は低くなるでしょう。

日本でも時折報道される凶悪犯罪は、ほとんどが麻薬マフィア同士の抗争。ただ麻薬マフィアは、関係者ではない外国人を標的にすることはなく、旅行者が巻き添えになることはめったにありません。一部報道だけを見ると「メキシコは危険な国」という印象を受けがちですが、麻薬マフィアの存在は旅行者とは無縁といっても過言ではありません。

都市部で外国人が身代金目的に誘拐される例が報告されています。ただ、この被害に遭う人は現地在住者がほとんどで、犯罪組織によって綿密に計画されて行われているもの。短期滞在の旅行者が誘拐に遭遇した例は、皆無に近いといえます。

とはいえ、メキシコ国内の犯罪発生件数は増加傾向にあり、2018年の殺人件数は過去20年で最多となったとの報告もあります。犯罪が少ないとされるエリアや危険情報が出されていない地域でも、最新の情報を確認し注意を怠らないようにすることが肝要です。

主要エリアの治安事情

主要エリアの治安事情
高層ビルから眺めた歴史地区のソカロ周辺(メキシコ・シティ)

●メキシコ・シティ
周辺部を含めると人口約2000万人を擁する首都で、観光の見どころも多いです。旅行者が多いエリアをふたつ紹介します。

まずは、歴史地区である中心部のソカロ(Zócalo)周辺。古い建物を利用した官庁や商店が多く、日中に歩くにはほとんど問題ありません。夜に飲食店を利用する際は、人通りが多く街灯の明るい道を歩くようにしましょう。人けがない暗い路地を歩くのは避けてください。

中心部のソカロから南西方向へあるソナ・ロッサ(Zona Rosa)周辺は、中級レベルから高級ホテルまで宿泊施設が集まっており、多数の飲食店があります。昼夜問わずあまり問題はありませんが、ディスコやナイトクラブがある区域では時折ケンカが発生しています。また麻薬の売人に声をかけられることもありますので、絶対にかかわらないようにしましょう。

メキシコ・シティで注意したい場所は、露天の市が並んでいるテピート(Tepito)地区。ソカロからそれほど離れていない所にありますが、麻薬がらみの犯罪が多く、しばしば銃器を用いた事件も発生するので立ち入らないようにしましょう。

青い海と白砂が美しいカンクンのビーチ
青い海と白砂が美しいカンクンのビーチ

●カンクン
メキシコを代表するビーチリゾート地。美しい砂浜が続く海岸沿いのホテルゾーン(Zona Hotelera)は、昼夜問わず安全が保たれています。一方、セントロ(Centro)と呼ばれる経済的なホテルや飲食店が集まるカンクンの中心地区は、滞在費を安く済ませたい旅行者に人気。セントロは、夜歩きする際に人けがない道は避けたほうが無難です。

夜のグアナファトを盛り上げる学生たちの楽団
夜のグアナファトを盛り上げる学生たちの楽団

●グアナファト
内陸部の中央高原地帯にある人気観光都市。ホテルや飲食店、観光スポットは、世界遺産に登録された歴史地区に集中しています。日中は観光客が行き交い、夜は市街がライトアップされて音楽を奏でる楽団が登場するなどにぎわいを見せますので、夜歩きしてもほとんど問題のない町として知られています。

ケレタロの市街に残る水道橋跡
ケレタロの市街に残る水道橋跡

●ケレタロ
旧市街に数多くの教会があり、水道橋も残っている歴史都市。中心街である歴史地区は道や広場にゴミがほとんど落ちておらず、清掃が行き届いていることで知られています。清掃だけでなく警備も行き届いていて治安が良く、世界遺産に登録された歴史地区を安心して町歩きすることが楽しめます。

国境を越えてメキシコに入国したら、すぐにバスターミナルへ
国境を越えてメキシコに入国したら、すぐにバスターミナルへ

●ティファナ
メキシコの最北端にある国境の町。米国のロサンゼルスからバスで4時間ほどで来られますので、かつては日帰りまたは数日の滞在でメキシコに触れられる都市として知られていました。ただし、米国へ不法に入国しようとする人たちが通過する町で、麻薬組織による犯罪も多く、日本の外務省による「不急不要の渡航は止めてください」の危険度レベル2(2020年2月時点)に該当しますので、市内観光はおすすめできません。陸路で国境を越えたらすぐバスターミナルへ行き、次の目的地へ向かうようにしましょう。なお、国境を超える際、米国からメキシコへ渡るのは容易ですが、メキシコから米国への入国審査や荷物検査は厳しく、時間がかかるのが現状です。

メキシコ旅行で気をつけるべき注意点

メキシコ旅行で気をつけるべき注意点
地下鉄は朝夕の混雑する時間帯を避けたほうが無難

●ひったくり、スリ、置き引き対策
まず、町歩きをする際にバッグは背負わず、ひったくられないように前に抱えるようにしたほうがよいでしょう。また、人込みではスリに遭う危険性も潜んでいます。市バスや地下鉄の車内で、財布やスマートフォンを盗まれたという被害報告もあるので注意しましょう。

スリに次いで被害例が多いのが置き引き。飲食店でトイレに行った隙に、席に置きっぱなしにしたカバンなどが盗まれたという例です。短時間であっても、身の回りの物は肌身離さずに。

流しのタクシーのリブレは白とピンク色の車体 ©iStock
流しのタクシーのリブレは白とピンク色の車体 ©iStock

●タクシーについて
首都のメキシコ・シティでは、2010年以降は減少しているものの、リブレ(Libre)と呼ばれる流しのタクシーに乗って強盗に遭うケースがあります。具体的には、流しのタクシー運転手と犯罪組織がグルになっていて貴重品を奪われたという被害例。また、銃器などで脅されてATMで現金の引き出しを強要されて、持ち逃げされたという例も報告されています。

このような被害を避けるために、タクシーは予約もできる無線タクシーのシティオ(Sitio)を利用しましょう。このタクシーはホテルやレストランで呼んでもらえるほか、シティオ専用の乗り場もあります。

なお、小都市には上記のような区分けがない所が多いですが、タクシーによる強盗はメキシコ・シティ以外はほとんど被害が報告されていないので、それほど心配はいりません。

空港にはシティオのタクシーが待機している
空港にはシティオのタクシーが待機している

●被害に遭ったときのために
あまり考えたくないことですが、強盗や置き引きなどに遭った場合、どうすればよいでしょうか。旅行に出る前に、必ず海外旅行保険に加入しておきましょう。被害に遭ったら最寄りの警察署に行き、アクタ・デ・ロボ(Acta de Robo)という盗難証明書を発行してもらいます。帰国後に保険会社に連絡し、盗難証明書を添えて被害報告をするという手順になります。

●犯罪に遭った際の緊急連絡先
■緊急事態通報:911(事件、事故:全国24時間対応)
■在メキシコ日本国大使館
 ・住所: Paseo de la Reforma No. 243, Torre Mapfre Piso 9, Col. Cuauhtémoc
 ・電話: (市外局番55) 5211-0028
 ・URL: https://www.mx.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html

まとめ

まとめ
ソカロ広場とメトロポリタン・カテドラル (メキシコシティ)  ©iStock

旅行者にとってメキシコは、安全への気配りを忘れなければ特段に危険な国というわけではありません。前述したように、危険なエリアに入らない、夜間の外出や人けのない所を歩くのを避ける、雑踏では常に注意を怠らない、などを守っていれば犯罪に遭遇する確率は低いといえます。陽気で明るい雰囲気にあふれるメキシコへ。史跡や各地の文化などをおおいに満喫してください。


TEXT:シエスタ(さかぐちとおる)
PHOTO:シエスタ、iStock

メキシコの最新安全情報(外務省)

メキシコの治安については、外務省が提供する以下の最新安全情報も合わせてご覧ください。

筆者

地球の歩き方書籍編集部

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