50オトコの50日間世界一周。地球のまわり方! 第1回 フィジー~ニュージーランド編

公開日 : 2019年12月27日
最終更新 :
今回の旅で一番お気に入りの写真を扉に。ブラジル・トランコーゾにて
今回の旅で一番お気に入りの写真を扉に。ブラジル・トランコーゾにて

私、嵐よういちは旅行作家をやっていて世界中を渡り歩いています。現在までの訪問数は90ヵ国近くになりますが、世界一周をこれまで一度もやったことがなく、タイミングが合えば挑戦したいと考えていました。
ついにそのチャンスがやってきました。まず旅程を作成することから始め、安い航空券を「スカイスキャナー」というサイトで探し、自分が行きたい場所のルートを検索しました。一度に全ルートのチケットを購入したわけではなく、アライアンスにもこだわりませんでした。LCCも使います。
世界一周といっても50日間くらいなので、特にいつもの旅とは変わらないのですが、一番に考えたことは“体調管理”でした。私も50歳になるので若い時のように無理はできないし、しっかりと休養日も作る。それに原稿を途中で書かないといけないので、“執筆日”なども作る必要がありました。

まずは南の島フィジーへ!

まずは南の島フィジーへ!
フィジーのナンディ空港に到着

 最初に目指したのはフィジーです。フィジー航空の、成田空港→ナンディ(フィジー)→オークランド(ニュージーランド)の通しチケットを5万2000円で購入しました。初めてフィジー航空に乗りましたがサービスは悪くないし、シート・モニターで映画は観られるし、チェックインの48時間前にセルフチェックインの知らせがメールで届き、席も指定できました。さすがナショナル・キャリア。
 フィジーの人口は約89万人(2017年・フィジー統計局調べ)で公用語は英語です。
 ナンディには朝8時には到着したのですが入国審査で長く待たされました。乗客は日本人観光客が多くハワイやサイパン、グアムに行くような層で、生粋のバックパッカーのような私とは人種が違うなと感じました。彼らのほとんどは英語が苦手のようで、入国審査で戸惑っていてすごく時間がかかっていました。私の番になったのですが、質問されたことは、ただ一言「予約している宿の名前はなんだ?」だけでした……。

宿の前のビーチは汚く泳いでいる人は少ない
宿の前のビーチは汚く泳いでいる人は少ない

●バックパッカーにとってはやや退屈な町
 泊まった場所はバックパッカー宿で(バンブー・ホステル)、ニュージーランド人を中心に世界中の人が集まっていました。宿はビーチに面して建てられていますが、海は汚くて泳ぐ気にはなりません。ナンディ・タウンにはタクシーに乗って10分で着いてしまいますが町は小さく、そして観光する場所もさほどなく1時間あれば十分でした。
 宿ではツアーを催行していましたが、どれも値段が高くて惹かれるものもなく、お金を節約したかったので現地ツアーには行きませんでした。ナンディには5日間宿を予約していたけれど2日で良かったと思います。フィジーは新婚さんやカップルが、ハワイやグアムのようにお金を使ってリゾートライフを楽しむような場所であるようです。

宿に併設しているバーでノンビリ
宿に併設しているバーでノンビリ
バックパッカー宿の前の海岸線
バックパッカー宿の前の海岸線

 私の旅の目的には適さない場所ですが、そもそもフィジーとニュージーランドには一緒に行く友人がいて、彼が「せっかくフィジーに行くのなら5日間滞在して堪能したい」と主張。その意見を尊重して5泊の計画をたてたのです。しかし彼は、出発直前に身内の不幸が二つも重なって来られなくなったのです……。

ナンディ・タウンは小さいです
ナンディ・タウンは小さいです
ナンディ・タウンの市場
ナンディ・タウンの市場
夕食はバターカレー ビールとサラダで2000円弱です
夕食はバターカレー ビールとサラダで2000円弱です

 退屈になったので、仕事をして酒を飲むしかない。朝食を食べた後、ビーチ沿いにパソコンを持っていき仕事。14時から宿に併設しているバーで酒。夕方から、知り合った日本人と酒飲みながら食事。このようにかなりノンビリしていました。旅の最大の贅沢は“暇”だと私は思っているのでこれはこれで楽しかった。宿周辺のレストランは中国、韓国、インド、東南アジア料理ばかりで食事には特に困りませんでした。
 50オヤジがフィジーですべきこと。家族などと来ている場合はハワイのようにお金を使ってツアーに申し込んでエンジョイし、ノンビリしたい人は気候がいいのでゆったりと酒を飲みながら本を読むのをおすすめします。

フィジーのビールは美味しかった! 小ビンで約200円
フィジーのビールは美味しかった! 小ビンで約200円
宿ではときおり仕事をしていました
宿ではときおり仕事をしていました

優しいニュージーランド人

優しいニュージーランド人
ニュージーランド北東部の大きな港湾都市、オークランド

 朝6時に宿の前からタクシーを拾って空港に向かいました。この運転手もそうですが、フィジーの人は人懐っこくて優しい人が多かった。
 飛行機に乗り込んだ私はナンディを出発した途端に寝てしまい、気がついたらオークランドに到着していました(フライト時間は3時間10分)。ニュージーランドに来るのは姉の結婚式以来25年ぶり。月日が経つのは早いもので、姉はその後離婚し、当時お腹に入っていた姪っ子はもう24歳になりました。その時のニュージーランドの感想は、ワーキング・ホリデーで働いている日本人が多い! 人がやたらフレンドリーだ、ということでした。
 ニュージーランドの面積は日本の約4分の3の大きさで、人口は495万人(2019年3月・同国統計局調べ)、オークランドは人口約166万人(2017年・国際連合調べ)です。
 今回の入国審査は質問攻めでした。旅のコースを言わされ、Eチケットのコピーも見せました。「あなた、いろんな国に行くのね。羨ましい」と、終始、好意的に接してくれました。
 空港を出た私は『スカイ・バス』と呼ばれる空港バスで中心街に向かうことにしました。出口を出てしばらく迷いましたが、赤いマークの乗り場を見つけ、20代後半の女性係員にチケットを買うことを告げるとフレンドリーに「あなた、どこで降りるかわかっている?」と聞かれました。「調べてあるから大丈夫です」と返すと、「それは良かった。ここの売り場でチケットを買ってね」と優しく教えてくれました。
 チケットは往復32ニュージーランドドル(約2560円)で、売り場のおばさんがこれまた優しい人で会話が弾みました。バスが来て私が乗り込むと女性係員は運転手に降りる場所を伝えてくれました。私は世界中でさまざまな空港バスに乗りましたが、スタッフが不愛想で態度が横柄な所は少なくないのです。このような気持ちの良い対応をされると、その国に好意を持つものです。

●オークランドの町は東洋人ばかり
 宿の場所は中心街のクイーン・ストリートから少し中に入った所でした。そこにチェックインをして町を歩き始めましたが、フェリー乗り場近くには人が大勢いて平和な雰囲気を醸し出し、海風が時おり強く吹いてきて気持ちよかった。
 お金持ちの所有物らしき高級なボートやフェリーが何隻も停泊していました。思えば25年前の姉の結婚式の際の旅行では家族で夜にフェリー・クルーズをやってワインを飲みながら食事をして、大きなロブスターを食べたまでは良かったのですが、それが原因で人生で初めて翌朝に蕁麻疹が出来たことは忘れられません。
 しばらく町を歩いて気がついたことは、中心街に限れば治安が良さそうで人種は東洋系、特に中国人が多く、観光で来ている人ももちろんいるけれど永住権あるいは国籍を持っている人が多そうです。それゆえか、町を歩いていてもジロジロ見られることは皆無で居心地は悪くない。町にあるレストランは中国、韓国、日本のレストランばかりで、たまにインド、トルコ系の店が目に入り、ファスト・フードも多い。この日の夕食は麺料理屋(King Made Noodles/金味徳)で牛麺と水餃子を食べました。とても美味しく、約1600円でした。

オークランドの美しいハーバー。また行きたい
オークランドの美しいハーバー。また行きたい
オークランドで食べた牛麵。美味しかった
オークランドで食べた牛麵。美味しかった
オークランド戦争記念博物館 入場料は約1750円
オークランド戦争記念博物館 入場料は約1750円

●オークランド戦争記念博物館はおすすめ
 翌日は、午前中から町を歩きまわりました。オークランド大学を横切り、最初に向かったのはオークランド・ドメインという名の美しい公園です。人がまったくいない道を進んでいきます。ここは火山活動で作られた地形をそのまま利用しているようで、起伏が激しく静かで、散歩やランニングをするには最適でしょう。
 外縁が高く、内部が低くなっているようで公園の外側からは町を一望できます。平日だからか人はほとんど歩いていません。目指すは園内にあるオークランド戦争記念博物館です。入場券売り場でスタッフのオバちゃんととりとめのない話をしたのですが、この人もフレンドリー。
 ちょうど一階の入口に入ると社会科見学の中学生の集団と一緒になってしまいました。このようなシチュエーションは歓迎しません。大体、このようなことになります。
1 先生が注意しても生徒がうるさい。
2 展示物の前で説明が始まって占拠してしまうので、ゆっくり見ることができない。
3 東洋人の私が珍しいのかジロジロ見られたり話しかけられ、中には失礼なことを言ってくる輩もいる。

 今回、1、2はありましたが、3は一切ありません。なぜなら、私が珍しくないからです。彼らは白人、先住民族のマオリ族、インド系、中国系、それらの混血で、見ているだけでニュージーランドの人種構成がわかって面白いです。

 1階は、ニュージーランドの先住民族のマオリ族の文化が学べる展示です。彼らの『マエラ』と呼ばれている集会場があり、中に入るには帽子や靴を脱がないといけません。
 2階は自然史のコーナーで、ニュージーランドの火山活動のジオラマの前では観光客が楽しそうに写真を撮っており、また、魚や動物なども展示されています。
 3階は戦争記念コーナーです。何と日本のゼロ戦が展示されています。この機体は一度も空中戦に挑むことなく終戦をむかえたようです。このゼロ戦の地上整備員は、若い操縦士の命を救うためにわざと修理を遅らせたのか、そのおかげできれいな状態を保っているようです。
 オークランド戦争記念博物館は大きいし、中身も充実しているのでおすすめします。行って良かった。

零式海上戦闘機の保存状態は良好
零式海上戦闘機の保存状態は良好
戦争博物館前からの眺め
戦争博物館前からの眺め
入場料約2000円のスカイタワー展望台から地上を見る。コワイ!
入場料約2000円のスカイタワー展望台から地上を見る。コワイ!

●スカイタワーに登る
 オークランド最終日です。この日は夕方に空港に移動するのでそれまで町を歩いて、シンボルにもなっているスカイタワーに登ります。
 スカイタワーの高さは328メートルで、南半球で一番です。スカイタワーの下のスカイ・シティは、エスカレーターを上がるとカジノがあり、中国人の団体客が楽しそうに遊んでいた。展望台のチケット売り場ではスカイジャンプの受付もやっています。こんな高さからジャンプするなんて私には到底考えられません。何でもスカイデッキからビルの谷間に飛び込む体験が出来るらしく、人気のようです。
 エレベーターで展望台に上がります。平日の昼間なので観光客は少なく、オークランドの町を一望できるのでなんだか癒やされます。カフェに入り時間を潰し、その後は海沿いを散歩して、荷物を宿に取りに行ってスカイ・バスで空港に向かいました。
 ニュージーランドの印象は“ザ・先進国”。国も人もおしなべてレベルが高く、またいつか訪れたいと思いました。

ニュージーランドを後にし、いざチリへ。のはずが……

ニュージーランドを後にし、いざチリへ。のはずが……
結局こんなホテルに泊まりました

 ラタム航空に乗って南米・チリのサンティアゴまで約11時間の移動です。
 フライトは18時で、14時40分にチェックイン・カウンターに並びます。あと20分ぐらいで開始らしく、私の前には30人ほど並んでいます。
 15時20分。まだチェックインが始まりません。私の後ろには大勢の乗客が並んでいます。スタッフは3人ぐらい待機していますが何をやってるの? 
 15時45分。まだ動きがありません。待ちくたびれてきました。スタッフは5、6人いますがまだチェックインが開始されず、他の乗客がなにやら抗議しています。スタッフがなにもアナウンスをしないのは航空会社としては問題だと思います。
 16時になってやっと開始かと思いきや、乗客はなにやら紙をもらっています。嫌な予感がします。私の番になって尋ねると「チリからの飛行機がまだこっちに飛んできていません。だからフライト時間のメドがたっていないのです。このクーポンは20ニュージーランドドル(約1500円)分の食事券です。何か食べて時間を潰して、2時間後にまたここに来てください」
 18時少し前。2時間経ったので再びラタム航空のカウンターに行きます。乗客が何やら不満げな顔をしています。尋ねると男性スタッフが「あと1時間後にここに来てください。これで時間を潰してください」と、再び約1500円分の食事券をくれました。
 私はカフェでコーヒーとパンを食べていました。そして何気に電光掲示板に目をやると、私のフライトが『キャンセル』になっていた!
 さすがにこの時は血の気が引きました。サンティアゴの宿は先払いで支払い済みだし、旅の予定は狂ってしまう。それにオークランドでもう一泊なんて、宿はどうするか? 慌ててカウンターに行くと「明日の朝8時の便に替わりました。ホテルはこちらで用意します」と、詳細が記載されているバウチャーを渡されました。
 ラタム航空が用意してくれたバスが到着したのは20時を過ぎていました。バスに乗り込むと乗客の大半はスペイン語とポルトガル語で会話をしています。30分弱でホテルに到着しましたが、1泊いくらするんだ?というような高級ホテル。部屋は大きく、リビングやキッチンもあり、ツインベッド。こんな部屋にひとりではもったいないくらいで、さらに食事も付いていました。だが、朝5時に迎えのバスが来るのでかなり早めに就寝しました。

空港の給水機。冷たくて美味しい水が出ました
空港の給水機。冷たくて美味しい水が出ました

●サンティアゴにGO!
 空港で無事にチェックインを終えた時には「やっと出発できる」とホッとしました。
 短いオークランド滞在はトラブルが発生したものの、全体的にはいい印象を持ちました。そして最後にはこんなことがありました。セキュリティ・チェックは長蛇の列で、乗客を誘導する男性スタッフが私の顔を見ると「搭乗券を見せてください」と言ってきました。
見せると「あれ? サンティアゴ行きって、昨夜キャンセルになった便だよね。大変だったね。どうしていたの?」と尋ねてくる。事情を説明し、高級ホテルに泊まったと伝えると、
「そうか。そんなホテルに泊まれたんだね。それは良かった」と。
「でも3時半起きだったのでなんか複雑」。そう言うと笑っている。こんな時までフレンドリーに接してきました。
 その後、手荷物をセキュリティの機械に通す時、水が少し入ったペットボトルが引っかかりました。通常だったら全部飲み干して検査前に捨てるのですが疲れと睡魔からすっかり忘れていました。すると中国系の若い男性係員が「これ少し残っているけど。残りの水を捨てようか? そうすれば空になってあそこの給水機で冷たい水を補給することが出来るけどどうします?」
 そんな信じられないことを言ってくるのです。こんなに親切にセキュリティの係員に言われたのは初めてです。
 「はい、お願いします」と言うと彼は水を捨て、空のペットボトルを私に渡し、笑顔で
「良い旅を!」私は疲れも忘れ、給水機に冷たい水を入れたのでした。

第2回 チリ~ポルトガル編に続く

文:嵐よういち

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

【記載内容について】

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