【フランス・リヨン 旅の最新事情】夏の終わりを惜しみ観光客でにぎわう世界遺産の街リヨンの今を現地在住者がレポート

公開日 : 2021年09月06日
最終更新 :
リヨン旧市街「サン・ジャン広場」のテラス
リヨン旧市街「サン・ジャン広場」のテラス

今夏からフランスでは「衛生パス」が導入され、長距離移動のための公共交通機関、文化施設、飲食店などを利用する際に提示が求められています。この「衛生パス」は観光客受入れのブレーキとなるのではと懸念されていましたが、導入から1ヵ月、リヨン最大の観光スポットである歴史地区の旧市街は「衛生パス」持参の観光客でにぎわいをみせています。コロナ禍で迎えた2度目の夏も終わりに近づく世界遺産の街リヨンの今を、現地在住者がレポートいたします。

観光客と地元リヨン人で活気がよみがえる旧市街

観光客と地元リヨン人で活気がよみがえる旧市街
リヨン旧市街のメインストリート「サン・ジャン通り」

1989年から世界遺産に登録されたリヨン歴史地区、なかでも旧市街は最も観光客でにぎわう場所ですが、外出規制措置が講じられていた6月頃まではゴーストタウンと化していました。リヨンでは、今年こそはという思いで2度目のコロナ禍の夏を迎えたところ、かきいれどきとなるヴァカンスを前に、フランス政府が「衛生パス」の導入を決定しました。発表から施行までの期間が短く、突然の措置に観光客の足が遠のくのではないかと懸念されました。

リヨン旧市街「グゥヴェルヌマン広場」のテラス
リヨン旧市街「グゥヴェルヌマン広場」のテラス

「衛生パス(Pass Sanitaire)」とは、ワクチン完全接種済みの証明書あるいは72時間以内に取得したRT-PCR検査または抗原検査に基づく陰性証明書あるいは過去11日前から6ヵ月以内に感染回復したことを示す証明書をもって交付されるQRコードのことです。

長距離移動の公共交通機関、美術館・博物館などの文化施設の利用のほか、飲食店においては、店内のみならずテラス席を利用する場合も「衛生パス」の提示が義務付けられます。18歳未満(12歳以上)の未成年者は9月30日まで猶予が与えられていますが、成人の場合、8月9日以降、「衛生パス」なしでは美術館にも映画館にも、レストランやカフェにも入ることができなくなりました。

リヨン旧市街の小路に所狭しと並ぶテラス席、ランチ時はどこも満席に
リヨン旧市街の小路に所狭しと並ぶテラス席、ランチ時はどこも満席に

8月31日時点のワクチン完全接種率は、フランスでは全人口の60%、欧州(EU)全体では58%に達しています。ワクチン接種が進み、「衛生パス」の取得者も増えてきました。「衛生パス」導入から1ヵ月、リヨンでは新しい社会規範が定着しはじめ、観光客で混み合う旧市街のレストラン街では、事前の予約なしでも受け入れに支障なく、入店前に「衛生パス」を提示してからテーブルに着席するという一連の流れが円滑に行われています。

また、7月より飲食店の収容人数の制限が解除されたので、テラス席も店内も、従前のように混み合うようになりました。とくに「ブション」と呼ばれるリヨンの伝統レストランはテーブルとテーブルが接近していることが特徴です。見知らぬ臨席の人と距離が近くても、「衛生パス」所持者同士であるという安心感のおかげで、かつての活気を取り戻したようです。

旧市街に観光客を惹きつける新しいオブジェが登場

旧市街に観光客を惹きつける新しいオブジェが登場
リヨン旧市街のガダーニュ博物館前に設置されたからくり時計

2021年1月、リヨンの歴史博物館とマリオネット博物館を併設したガダーニュ博物館の前に「シャルヴェの大時計」、通称「ギニョールの大時計」と呼ばれるからくり時計が設置されました。リヨンの伝統人形劇の主人公ギニョールと相方のニャフロン、そして、イタリアの即興演劇コンメディア・デッラルテのキャラクターであるアルレッキーノとプルチネッラをモチーフにした4体の人形が、15分ごとに鐘を鳴らして時刻を告げます。からくりが作動する時刻になると、大時計の前にひとだかりができ、旧市街の人気オブジェとなっています。

詳しくはリヨン特派員ブログで紹介しています。
https://tokuhain.arukikata.co.jp/lyon/2021/09/post_351.html

■シャルヴェ大時計(HORLOGE CHARVET)
・通称: ギニョールの大時計(HORLOGE AUX GUIGNOLS)
・住所: 1 place du Petit Collège 69005 Lyon France
・最寄り駅: 地下鉄D線Vieux-Lyon下車

フルヴィエールの丘に残される古代ローマ遺跡「円形劇場」
フルヴィエールの丘に残される古代ローマ遺跡「円形劇場」

旧市街で中世からルネサンス期の建築を楽しみ、「ブション」で伝統料理を堪能したら、リヨン最古の丘へ足をのばしてみましょう。足腰が丈夫な方は旧市街から階段あるいは坂道をのぼり、自信のない方はケーブルカーを利用して「フルヴィエールの丘」の頂上へ。紀元前43年に古代ローマ人が植民都市としてつくったリヨンの起源をたどることができます。

おすすめの観光スポットは、紀元前1世紀にリヨンの街を見下ろす場所に建設された古代ローマ円形劇場です。1万人以上の観客を収容できる大劇場は、その規模からローマ植民都市であった当時のリヨンの繁栄が伺われます。現在でも野外コンサート会場として使用されている現役の劇場です。

入場無料ですので、観光客も地元リヨン人も、遺跡に触れながら散歩を楽しみ、ランチ時には客席でサンドイッチを頬張ってピクニック気分を楽しむ光景もみられます。

■古代劇場(THEATRES ROMAINS)
・住所: 17 rue Cléberg / 6 rue de l’Antiquaille 69005 Lyon France
・最寄り駅: ケーブルカーF1(Saint Just方面)Minimes下車あるいはケーブルカーF2(Fourvière方面)Fourvière下車
・営業時間: 毎日7:00-21:00
・定休日: 1月1日、5月1日、12月25日
・入場料: 無料
・URL: https://lugdunum.grandlyon.com/fr/

丘に埋め込まれた斬新な設計のガロ・ロマン文明博物館「ルグドゥヌム」
丘に埋め込まれた斬新な設計のガロ・ロマン文明博物館「ルグドゥヌム」

劇場に隣接して、古代ローマ人が名づけた町の呼称「ルグドゥヌム」を冠した文明博物館があります。遺跡の景観を損なわないようにという配慮から、建物全体が丘に埋め込まれた設計で、内部は最上階にある入口から螺旋状のスロープをくだりながら展示室をめぐる構造となっています。リヨンとその近郊で発掘された出土品を中心に、先史時代から原始時代にはじまり、古代ローマ統治下の時代まで、彫刻、モザイク、生活道具、陶磁器、宝飾品、棺、宗教品など、さまざまなオブジェが展示されています。当博物館は、入館に際して「衛生パス」の提示が求められますが、事前のチケット購入は義務付けられていないので、窓口で入場券を購入して見学できます。

■ルグドゥヌム(LUGDUNUM)
・住所: 17 rue Cléberg / 6 rue de l’Antiquaille 69005 Lyon France
・最寄り駅: ケーブルカーF1(Saint Just方面)Minimes下車あるいはケーブルカーF2(Fourvière方面)Fourvière下車
・営業時間: 火曜日~金曜日 11:00-18:00、土曜日・日曜日10:00-18:00
・定休日: 月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
・入場料: 大人7ユーロ
・URL: https://lugdunum.grandlyon.com/fr/
※入館時に「衛生パス」の提示が求められます

リヨンのシンボル「フルヴィエール大聖堂」とリヨンを一望するパノラマの眺め

リヨンのシンボル「フルヴィエール大聖堂」とリヨンを一望するパノラマの眺め
観光客がもどってきた「フルヴィエール大聖堂」前の広場

フルヴィエールの丘の頂上に聖母マリアに捧げる白亜の教会がそびえ立ち、リヨネ(地元リヨン人)はこの丘を「祈りの丘」と呼んでいます。現在の教会は、1872年から1896年にかけて、リヨン出身の建築家ピエール・ボッサンが設計し、ビザンチン、ロマネスク、ゴシックの建築様式を融合させた、個性的な外観を呈してます。至るところに彫刻装飾が施された外壁もさることながら、教会内部は、天井、床、壁一面が金装飾とモザイクで覆われており、息をのむほどの豪華さに、観光客や巡礼者の足が絶えません。今年もヴァカンスシーズンを通じて、教会前の広場ではヨーロッパ各地の言語が飛び交い、カメラポーズを決める観光客でにぎわっています。

■フルヴィエール・ノートルダム大聖堂(BASILIQUE NOTRE-DAME DE FOURVIERE)
・住所: 8 Place de Fourvière 69005 Lyon France
・最寄り駅: ケーブルカーF2(Fourvière方面)Fourvière下車
・見学時間: 毎日7:00-20:00(ただし、日曜日7 :00-12:30は見学不可)
・URL: https://www.fourviere.org/en/

フルヴィエール展望台からリヨンを一望する眺めは観光客に大人気
フルヴィエール展望台からリヨンを一望する眺めは観光客に大人気

大聖堂の横にリヨンを一望できる展望台があります。眼下にオレンジ屋根がつらなる旧市街が広がり、その向こうにソーヌ川、そしてプレスキル(中洲)、さらにローヌ川へと続き、天気がよい日は、遥か彼方に、フレンチアルプスのモンブランまでを見渡すパノラマの絶景を満喫できます。リヨン滞在中は毎日丘にのぼって景色を楽しむという観光客がいるほど、フォトジェニックなスポットとして人気を博しています。リヨンは屋外でのマスク着用義務がありませんが、とくに開放的な丘の上ではマスクを外してのびのびと目の前に広がる光景を楽しんでいる姿が見られます。

8月より「衛生パス」という新しい規定が施行されましたが、このようにリヨンの観光地区では混乱もなくルールが定着し、観光客やリヨネ(地元リヨン人)が夏の終わりを惜しみ、ヴァカンス終盤を満喫していました。
次回は、ヴァカンスシーズンを終えて、日常に戻ったリヨンの様子をお届けいたします。

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※当記事は、2021年9月3日現在のものです

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筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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