ワインだけではないフランス・ボルドー観光の魅力

公開日 : 2019年12月26日
最終更新 :
ガロンヌ川沿いに発展した「月の港」ボルドー ©iStock
ガロンヌ川沿いに発展した「月の港」ボルドー ©iStock

世界的に有名なワインの生産地ボルドー。ローマ帝国の属州であった時代から良港をもつ町として栄え、12世紀以降ワイン交易で発展しました。三日月形に湾曲したガロンヌ川沿いの「月の港」は世界遺産に登録され、今も町には古典様式の重厚な建築物が多く残っています。ワインだけでなく、その美しい町並みも楽しみましょう。

ボルドーとは

ボルドーとは
フランス南西部に位置するボルドー ©iStock

●ボルドーとは
人口約25万人のボルドーはフランス南西部のヌーヴェル・アキテーヌ地域圏に属し、この地方の文化、経済の中心地です。ガロンヌ川沿いにある港町で、ワインの生産地として世界的に知られています。

カンコンス広場に立つ高さ43mのジロンド(派)の記念碑
カンコンス広場に立つ高さ43mのジロンド(派)の記念碑

紀元前よりローマ帝国の主要な交易港として栄え、ワイン造りも始まりました。12世紀にイギリス領となってからは、ワインをイギリスに輸出することによって繁栄。18世紀には西インド諸島との中継貿易の拠点となったことで黄金時代を築きます。フランス革命時には革命の引き金となったジロンド派を生み出したり、モンテスキュー(1689-1755年)やモンテーニュ(1533-1592年)を世に送り出したり、と歴史的にも興味深い町です。

ボルドー・サン・ジャン駅には19世紀の香りが残る ©iStock
ボルドー・サン・ジャン駅には19世紀の香りが残る ©iStock

●パリからの行き方
パリからボルドーへ列車でのアクセスは、パリ・モンパルナス駅から高速列車TGVでボルドー・サン・ジャン(Bordeaux St-Jean)駅まで約2時間10分。駅からはトラム©線で約10分のカンコンス(Quinconces)で下車すると、市内中心部のカンコンス広場に着きます。観光案内所もすぐ近くにあります。

飛行機の場合は、パリのシャルル・ド・ゴール空港またはオルリー空港からボルドー・メリニャック(Bordeaux Mérignac)空港まで約1時間。空港から駅まではシャトルバスで約30分。パリからボルドーへは列車でも飛行機でもアクセスしやすい町です。

カヌレとマカロンとエスプレッソのセット(カヌレ・ベラルドラン €5.70)
カヌレとマカロンとエスプレッソのセット(カヌレ・ベラルドラン €5.70)

●ボルドーの名物菓子「カヌレ」
フランス語で「溝の付いた」を意味する「カヌレ」は、ラム酒とバニラの芳醇な香りと、中のしっとりとした食感がたまらないボルドー名物の焼菓子です。

ボルドーではワインを造る過程でワインの澱(おり)を取り除くために卵白を使っていました。18世紀に、ある修道女が余った卵黄を使って焼菓子を作ったのがはじまり、というワインの町ボルドーらしい起源をもっています。ボルドーを訪れたら、ぜひ味わってみてください。

■カヌレ・ベラルドラン Canelés Baillardran
ボルドー市内に数ヵ所あるカヌレ専門店。サント・カトリーヌ通りの店はサロン・ド・テを併設。
・住所: 76,rue St-Catherine
・URL: https://www.baillardran.com/en/

ワインの産地としてのボルドー

ワインの産地としてのボルドー
サンテミリオン村のブドウ畑

●産地・ブドウの品種
ボルドーは11万haのブドウ畑が広がる世界最大のワイン産地です。おもなブドウの品種はカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロ。濃厚な赤ワインの印象が強いですが、赤・白・ロゼ、甘口・辛口と、幅広い種類を産出しています。

ジロンド川の左岸、上流にあるオー・メドック地区は、サンテステフ、ポイヤック、サン・ジュリアン、マルゴーなどの上質な赤ワインを産する村や、有名シャトーがずらりと並ぶ、ボルドーの花形的な場所となっています。

ジロンド川の左岸、下流のメドック地区にはオー・メドックのように高名なシャトーはありませんが、上質で手ごろなワインを安定して産する地域です。
ガロンヌ川の左岸グラーヴ地区では赤・白ともに長期熟成向けから軽めのものまで幅広く生産し、南部には、偉大な貴腐ワインで知られるソーテルヌ村があります。

ほかにも、ジロンド川、ドルドーニュ川の右岸側ではコート・ド・ブライ、芳醇な赤ワインで知られるポムロルとサンテミリオンなどが上質な産地として知られています。ガロンヌ川とドルドーニュ川に挟まれたアントル・ドゥー・メールは、さわやかで軽めの白ワインの生産地です。

ボルドーワイン委員会で楽しめる「バーラ・ヴァン」のグラスワイン
ボルドーワイン委員会で楽しめる「バーラ・ヴァン」のグラスワイン

●ボルドーワインの歴史
ボルドーは古くから良港をもつ町として栄えてきましたが、12世紀にはイギリス領になったことがあります。1152年、この地(アキテーヌ公領)を相続していたアリエノール・ダキテーヌ(1122-1204年)が、後にイギリス王ヘンリー2世(1133-1189年)となるアンリ・プランタジュネと結婚し、ボルドーを含むフランス南西部を嫁入りの財産としたためでした。以来、イギリスがフランスワインの最大の市場となり、貿易の中心地ボルドーに富をもたらしました。フランスがイギリスからこの地を取り戻すまでに300年を要しましたが、その間、ボルドーのワイン産業は、より上質のワインを求めるイギリス人のおかげで大きく発展しました。

ワインの都だけあって、ワインを楽しめる場所もたくさんあります。たとえばCIVB(ボルドーワイン委員会)本部1階にあるワインバー「バーラ・ヴァン」ではグラスワインが€2から味わえます。

■バーラ・ヴァン Bar à Vin
・住所: 3, cours du XXX juillet
・URL: https://baravin.bordeaux.com/en/

5大シャトーのひとつ、シャトー・マルゴー
5大シャトーのひとつ、シャトー・マルゴー

●ボルドーワインの魅力について(色別)
・赤ワイン
カベルネ・ソーヴィニョン種やメルロ種のブドウから造られる赤ワインは、濃厚でしっかりとした味わい。その香りはベリー系果実やスミレを思わせ、誰をもうっとりさせます。相性がよいのは肉料理。ハード系のチーズにも合います。

・白ワイン
おもにソーヴィニョン種のブドウを使って造られます。柑橘系のさわやかな香りとすっきりとした味わいが魅力です。シンプルな魚料理や甲殻類とよく合います。近郊のアルカションで採れる生ガキと合わせるのもおすすめです。

・貴腐ワイン
遅摘みのブドウから造られる甘口の白ワイン。なかでも「シャトー・ディケム」はボルドーの最高峰と言われるほどの高級ワインです。アペリティフとして、またフォワグラやブルーチーズと合わせて楽しむのもいいでしょう。

・ロゼワイン
果皮を浸すことで、美しいバラ色のワインが生まれます。香りはフルーティ。夏の日のテラスでいただくアペリティフにぴったりです。

シャトー・ラフィット・ロートシルト(1988年)のラベル ©iStock
シャトー・ラフィット・ロートシルト(1988年)のラベル ©iStock

●格付けについて
メドック、グラーヴなど、地域ごとに独自の格付けがあります。たとえばメドック地区の格付けは1855年にナポレオン3世(1808-1873年)の要請によって定められました。1973年に一度だけ改訂された結果、1級に格付けされた下記のシャトーは「5大シャトー」としてボルドーワインの頂点に君臨し続けています。

●5大シャトー
■シャトー・ムートン・ロートシルト Château Mouton Rothschild
・URL: https://www.chateau-mouton-rothschild.com/?lang=ja

■シャトー・マルゴー Château Margaux
・URL: https://www.chateau-margaux.com/jp

■シャトー・ラフィット・ロートシルト Château Lafite-Rothschild
・URL: http://www.lafite.com/en/

■シャトー・ラトゥール Château Latour
・URL: https://www.chateau-latour.com/jp

■シャトー・オー・ブリオン Château Haut-Brion
・URL: https://www.haut-brion.com/en/

ユニークなデザインのシテ・デュ・ヴァン ©iStock
ユニークなデザインのシテ・デュ・ヴァン ©iStock

●ワイン博物館 シテ・デュ・ヴァン
2016年にオープンしたワインに関する複合施設。55mの高さをもつ建物は、ブドウの木やグラスの中で揺れるワイン、ガロンヌ川の流れをイメージしています。施設内のワイン博物館では、世界のワインの歴史を日本語オーディオガイドで学ぶことができます。見学後は最上階テイスティングカウンターでの試飲付き、とワインファンならぜひ行ってみたい場所です。

■シテ・デュ・ヴァン Cité du Vin
・住所: Esplanade de Pontac, 134, quai de Bacalan
・URL: https://www.laciteduvin.com/en

ワイン以外のボルドーの見どころ

ワイン以外のボルドーの見どころ
建物に明かりがともる頃のシャルトロン地区 ©iStock

●世界遺産登録地「月の港ボルドー」
18~19世紀の都市計画によって生まれた調和ある町並みと、ガロンヌ河岸再開発が評価され、「月の港ボルドー」は2007年に世界遺産に登録されました。登録名の「月の港」は、三日月形に蛇行するガロンヌ川を中心に発展したボルドーの通称。町の北側のガロンヌ川沿いにあるシャルトロン地区は、18世紀の古典様式の立派な建物がそのまま残されている歴史地区となっています。

夕暮れのブルス広場の「水鏡」
夕暮れのブルス広場の「水鏡」
霧に覆われた幻想的な「水鏡」 ©iStock
霧に覆われた幻想的な「水鏡」 ©iStock

●ブルス広場の「水鏡」
18世紀の建物が並ぶブルス広場とガロンヌ川との間には、景観作家ミシェル・コラジューによる「水鏡」があります。深さ約2cmの鏡のような水面と霧が交互に現れ、18世紀の宮殿を幻想的に映し出します。建物の明かりがともる夕方は特に美しく、ボルドーで最も人気の撮影スポットとなっています。ただし冬期(11~4月)はメンテナンスのため実施されていないのでご注意を。

ナポレオンの命で架けられたピエール橋 ©iStock
ナポレオンの命で架けられたピエール橋 ©iStock

●「ピエール橋」
ガロンヌ川に架かるピエール橋はボルドーで最初に架けられた橋です。現在はトラムⒶ線が走るこの橋は、ナポレオン(1778-1746年)の命によって建設が始まり、1822年に完成しました。この橋が架かる以前は、ふたつの岸を渡る方法は船のみでした。石材とレンガで造られ、内側に空洞があるのが特徴です。内部は年1回ヨーロッパ文化遺産の日(9月第3土・日)に公開されています。橋には17ものアーチがあり、この17という数字はナポレオン・ボナパルトNapoléon Bonaparteのアルファベットの字数になっているとか。橋とともにボルドーの美しい町並みを、ぜひ眺めてみてください。

世界で最も美しい劇場のひとつ「大劇場」
世界で最も美しい劇場のひとつ「大劇場」

●大劇場
1773年から1780年にかけて建築家ヴィクトル・ルイによって設計された大劇場は、新古典派建築の代表的建築物。世界で最も美しい劇場のひとつと言われています。コリント式の12本の柱が並び、その上に9人のミューズと3人の女神像が立つ正面の眺めがすばらしいです。エントランスホールの大階段はパリのオペラ座パレ・ガルニエのモデルになりました。フランス語のガイド付きツアーで見学が可能です(ウェブサイトから要予約)。

■大劇場 Grand Théatre
・URL: https://www.opera-bordeaux.com/

おすすめのホテル

おすすめのホテル
4つ星ホテル「コンティ」の上品で落ち着いた内装

ボルドーの中心部、ガンベッタ広場の近くにある4つ星ホテル「コンティ」。客室、サロンとも内装はシックで落ち着いた色合いでまとめられ、ゆったりとリラックスできます。

■コンティ Konti
・住所: 10, rue Montesquieu
・URL: https://hotel-konti.com/

ボルドーの天気と服装について

ボルドーの天気と服装について
ボルドーでいちばんの繁華街サント・カトリーヌ通り ©iStock

ボルドーは北緯45度に位置し、北海道の最北端とほぼ同緯度にあります。しかし、大西洋岸にあって海洋性気候なので、1年をとおして暖かく冬は北海道のような寒さにはなりません。夏は暑くなりますが、乾燥しているので、比較的過ごしやすいです。

服装は、夏は日差しが強いので帽子や羽織りものなどでの日よけ対策が必要です。冬は重ね着で調節できようにするのがおすすめ。また冬は雨の日が増えるので折り畳み傘は必携です。

■ボルドーの天気&服装ナビ
・URL: https://www.arukikata.co.jp/weather/FR/BOD/

まとめ

まとめ
ロマンティックな名を持つボルドーの町を歩いてみて ©iStock

ワインで有名なボルドー。ワイン交易で栄え、18世紀に建てられた重厚な建物が並ぶ町を歩けば、往時の繁栄をしのぶことができます。ワインだけでなく、世界遺産に登録されている「月の港」の美しい町並みをぜひ堪能してください。

TEXT: オフィス・ギア
PHOTO: オフィス・ギア、iStock

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筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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