フランスの世界遺産「アヴィニョン歴史地区」の歩き方

公開日 : 2020年06月06日
最終更新 :

中世の建物が数多く残る城壁の町アヴィニョンは、プロヴァンス観光で外せない場所。かつてローマから教皇庁が同地に移されたこともあり、カトリックの中心地としても栄えました。毎夏には世界的に有名な『アヴィニョン演劇祭』が開かれるなど、さまざまな魅力を持った歴史と芸術、文化の町です。

【はじめに】2020年6月6日現在、観光目的の海外渡航は難しい状況です。『地球の歩き方ニュース&レポート』では、昨今の世界情勢をふまえ観光地情報の発信を抑制してきました。しかし、2020年5月31日で「期間限定の電子書籍読み放題サービス」が終了したこともあり「近い将来に旅したい場所」として、世界の現地観光記事の発信を2020年6月以降、再開することにいたしました。

世界各地のまだ行ったことのない、あるいは再び訪れたい旅先の詳しい情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス禍収束後は、ぜひ旅にお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを、心より願っています。

プロヴァンスの玄関口「アヴィニョン」

プロヴァンスの玄関口「アヴィニョン」
教皇庁広場とアヴィニョンの町並み @istock

アヴィニョンは南仏プロヴァンス地方の北部にあるボークリューズ県の県都で、商業や文化、観光の町として知られています。フランスの北から南の地中海に向けて流れ込むローヌ河畔にあり、交通の要所として、9〜12世紀にはプロヴァンス地方の中心都市になりました。

ヨーロッパの歴史の中でも特にアヴィニョンに注目が集まったのが「アヴィニョン捕囚」と呼ばれる出来事です。1309年に教皇クレメンス5世がアヴィニョンにローマ教皇庁を移したのです。それ以降1377年まで、クレメンス5世を含む7教皇にわたって、アヴィニョンに教皇庁が置かれました。その後、7代目グレゴリウス11世の時代に教皇はローマに戻りますが、アヴィニョンは1791年のフランス革命後まで教皇領として存続しました。

空から見たアヴィニョンの町の様子 @istock
空から見たアヴィニョンの町の様子 @istock

そのため、市内には中世からの歴史的建造物が多く、教皇庁宮殿やプティ・パレ、サン・ベネゼ橋(アヴィニョン橋)、ノートルダム・デ・ドン大聖堂といった建築物が残っています。これらの歴史的建造物は「アヴィニョン歴史地区」として、1995年にユネスコ世界遺産に登録されました。また、アヴィニョン市内の周囲は城壁で囲まれています。

美術館もいくつかあります。パリの美術収集家、ジャック・ドゥセのコレクションを公開するアングラドン美術館はドガやシスレー、セザンヌ、マネ、ピカソ、藤田嗣治などの作品を所有しています。モディリアニ『ピンクのブラウス』やゴッホ『線路上の汽車』は特に有名です。

アヴィニョンへのアクセス方法

アヴィニョンへのアクセス方法
パリ・リヨン駅からアヴィニョンへ @istock

パリからアヴィニョンへ向かうには列車が便利です。パリからアヴィニョン方面のTGV(高速列車)は、パリ・リヨン駅が発着駅。そこからアヴィニョンTGV駅まで約2時間40分の列車旅です。ただし、アヴィニョンTGV駅はアヴィニョン中心部から離れた場所にあるので注意が必要です。中心部の最寄り駅はTER(普通列車)に乗り換えて、アヴィニョンTGV駅から5分ほど乗車したアヴィニョン・サントル駅になります。

マルセイユからアヴィニョンに列車で向かう場合は、マルセイユ・サン・シャルル駅からアヴィニョン・サントル駅までTERが結んでいます。1時間20分から1時間40分で到着します。

アヴィニョン・サントル駅 @istock
アヴィニョン・サントル駅 @istock

アヴィニョン・サントル駅で下車したのちは北へ。城壁を越えて北上していくと、教皇庁宮殿などがある市内中心部に到着します。

アヴィニョンの天気

アヴィニョンの天気
ローヌ川と奥にサン・ベネゼ橋と教皇庁宮殿 @istock

地中海性気候のプロヴァンス地方は年間を通して雨が少なく、夏は気温30度を越える暑さになります。乾燥しているため、日本のような蒸し暑さはありません。冬はミストラルというアルプス山脈から吹き下ろす寒冷の季節風によって、氷点下近くまで気温が下がる日もあります。

■アヴィニョン(フランス)の天気&服装ナビ
・URL: https://www.arukikata.co.jp/weather/FR/AVN/

アヴィニョンのおすすめ観光スポット

アヴィニョンのおすすめ観光スポット
アヴィニョン市内にそびえる教皇庁宮殿 @istock

●教皇庁宮殿

ヨーロッパ最大のゴシック建築で、1335年から1352年にかけて建てられました。強固な外壁に囲まれた要塞のような造りになっており、壁の高さは50m。建物内は多くの部屋に分かれています。かつてはカトリックの中心地であった宮殿も、フランス革命時に聖像など宗教的なものが破壊されました。そのため教皇が暮らしていた頃の様子が今もそのまま内部に残っているわけではありません。建物内には14世紀の当時をしのばせるフレスコ画を一部で見ることができます。

・住所: Place du Palais 84000
・定休日: 無休
・営業時間: 9:00〜18:30(3月)、9:00〜19:00(4〜6月、9〜11月1日)、9:30〜17:45(11月2日〜2月)、10:30〜17:45(1月1日と12月25日)、9:00〜20:00(7月)、9:00〜20:30(8月)
・料金: €12(サン・ベネゼ橋との共通券は€14.50)
・URL: http://www.palais-des-papes.com/

●プティ・パレ美術館

アヴィニョン派絵画やイタリア絵画を中心に所蔵する美術館です。ボッティチェリ『聖母子』は必見です。「プティ・パレ」というのはフランス語で「小さな宮殿」という意味。周囲にある教皇庁宮殿の大きな建物と比較して小さな建物であるため、この名前がつきました。14世紀のローマ教皇のアヴィニョン捕囚と、15世紀から18世紀にかけてのアヴィニョンの変容を体現した建築物です。アヴィニョン大司教が住んでいた場所でもあります。

・住所: Palais des archevêques Place du Palais des Papes 84000
・定休日: 火曜、1月1日、5月1日、12月25日
・営業時間: 10:00〜13:00、14:00〜18:00
・料金: 無料
・URL: http://www.petit-palais.org/

●サン・ベネゼ橋

「アヴィニョンの橋」という名でよく知られているサン・ベネゼ橋。民謡『アヴィニョンの橋の上で』で「アヴィニョン橋で踊ろよ、踊ろよ……」と登場する、あの橋です。12世紀に建設されました。ただし、現在のサン・ベネゼ橋は対岸まで架かっておらず、川の途中で切れています。これは、度重なるローヌ川の氾濫で壊れてしまったため。元々は対岸のフィリップ美男王の塔まで続く橋でした。橋は途中まで渡ることができます。

・住所: Boulevard de la Ligne 84000
・定休日: 無休
・営業時間: 9:00〜18:30(3月)、9:00〜19:00(4〜6月、9月1日〜11月1日)、9:30〜17:45(11月2日〜2月)、9:00〜20:00(7月)、9:00〜20:30(8月)
・料金: €5(教皇庁宮殿との共通券は€14.50)
・URL: http://www.avignon-pont.com/

●アングラドン美術館

ファッションデザイナーでアートコレクターだったジャック・ドゥセの収集品を展示する美術館。セザンヌの静物画、モディリアニの『ピンクのブラウス』、ゴッホの『線路上の汽車』のほかに、ドガやドーミエ、シスレー、ピカソ、マネ、藤田嗣治などの作品が揃っています。

・住所: 5 Rue Laboureur 84000
・定休日: 月曜(4月1日〜10月31日)、日・月曜(11月1日〜3月31日)、12月25日、1月
・営業時間: 13:00〜18:00
・料金: €8
・URL: https://angladon.com/

アヴィニョン演劇祭

アヴィニョン演劇祭
@istock

アヴィニョン演劇祭は、毎年7月上旬から7月下旬まで開かれる国際的に有名な演劇祭です。世界で最も古い演劇祭でもあります。お祭り期間中は世界中から劇団や芸人が集い、それらのショーを見物する観光客が集まってきます。日本からも毎年多くの演劇人が訪れます。

アヴィニョン演劇祭が始まるきっかけは、フランスの演出家であるジャン・ヴィラールでした。ヴィラールが1947年9月に『アヴィニョン芸術週間』を開催し、それが現在のような形になりました。演劇祭が始まった当時は演目が古典劇に限られていましたが、現在ではあらゆるジャンルの演劇が行われます。また期間中は、市内が一日中お祭り騒ぎになります。

期間中のイベントは大きくふたつに分かれます。国内外から招待された一流カンパニーが出演する公式行事の「イン(In)」と非公式にアヴィニョンに集まってきたカンパニーが開く自主公演である「オフ(Off)」です。オフには600の劇団が参加します。教皇庁広場を中心に市内100ヵ所以上でイベントが行われます。

アヴィニョンのおすすめホテル

アヴィニョンのおすすめホテル
プロヴァンスらしい茶色の屋根が広がる @istock
ラ・ミランド(La Mirande) ©Booking.com
ラ・ミランド(La Mirande) ©Booking.com

●ラ・ミランド
市内中心部にある1309年まで歴史を遡れるホテル。部屋は18世紀の様式でまとまっており、部屋からは教皇庁宮殿を望めます。

・住所: 4 Place de l'Amirande 84000
・URL: https://www.la-mirande.fr/

アヴィニョン・グラン・ホテル ©Booking.com
アヴィニョン・グラン・ホテル ©Booking.com

●アヴィニョン・グラン・ホテル
アヴィニョン・サントル駅から徒歩すぐ。駅近くに拠点を置いて、観光は中心部まで徒歩で向かう人向けのホテルです。設備も現代的で快適に過ごせます。

・住所: 34 Boulevard Saint-Roch 84000
・URL: https://www.avignon-grand-hotel.com/fr/

おすすめ観光ツアー

おすすめ観光ツアー
ローマ時代の水道橋ポン・デュ・ガール @istock

路線バスの本数などが少ないローマ建築の水道橋ポン・デュ・ガールは、ツアーを使えば効率的に巡れます。ツアーではアヴィニョンからカルカッソンヌへ抜けるため、移動の手間も省けます。

■【JOIBUS】アヴィニョン発カルカッソンヌ着(途中ポン・デュ・ガールでは自由時間があります) by みゅう(地球の歩き方トラベル)
・URL: https://op.arukikata.com/tour/94220/

岩山の斜面に広がるゴルドの村落 @istock
岩山の斜面に広がるゴルドの村落 @istock

天空の村ゴルド、ラベンダーが美しいセナンク修道院、黄土の村ルシヨンなどは、車がとても便利です。ツアーなら、それらの村々を楽に巡れます。

■リュベロン横断 ~ゴルド、ルシヨン、ルールマラン、エクス・アン・プロヴァンス~ by みゅう(地球の歩き方トラベル)
・URL: https://op.arukikata.com/tour/93958/

まとめ

まとめ
蛇行して流れるローヌ川とアヴィニョンの町並み @istock

アヴィニョンはフランスの歴史において重要な場所です。徒歩で巡れる大きさですし、足跡をゆっくり感じながらの散策がぴったり。ローヌ川に吹く風を感じつつ、アヴィニョンが積み重ねてきた過去と人々の営みに、思いを馳せてみてください。

PHOTO: iStock

フランス旅行に役立つ記事はこちら

※本記事の観光関連情報は2020年3月30日現在のものです。

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2020年6月6日現在、フランスへの日本からの観光目的の渡航はできません。渡航についての最新情報、情報の詳細は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL:  https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

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