イタリアの世界遺産「ピサの斜塔」とは?歴史や基本情報など

公開日 : 2020年06月11日
最終更新 :
ドゥオーモとピサの斜塔
©iStock ドゥオーモとピサの斜塔

ピサの大聖堂ドゥオーモの鐘楼として14世紀に完成した塔。建設途中から傾き、その姿から“斜塔”として有名に。ドゥオーモなどと共に世界遺産に登録されています。塔内の螺旋階段で屋上まで行くと、目の前にドゥオーモの屋根、そして歴史のあるピサの町並みが一望できます。いろいろな角度で写真を撮るのも楽しみのひとつです。

ピサの斜塔とは?

ピサの斜塔とは?
©iStock ピサの斜塔の屋上には7つの鐘がある

ピサの斜塔は、大聖堂ドゥオーモの付属鐘楼として1173年から199年の歳月をかけて建設されました。手がけたのはドゥオーモ同様、建築家のボナンノ・ピサーノ。白大理石を使った、ゴシック様式とロマネスク様式が融合した美しい建造物です。

しかし、建設直後から地盤沈下により傾斜が始まります。途中で補正を試みたものの、傾斜したまま完成。その後も徐々に傾き、一時は垂直方向から4.5mも傾いてしまいました。
そのため1990年から大工事が行われ、安定が図られた2001年にようやく一般公開が再開されます。

円柱に囲まれた6層の回廊の上に鐘楼があり、円筒形の外径は約20m、内径は約4.5m。内部にある251段の螺旋階段で屋上まで行くことができます。
鐘のある屋上からはドゥオーモや礼拝堂、ピサの町並みの絶景が広がります。鐘は傾きが増すのを危惧して、鳴らされることはないとのこと。

ピサの斜塔とドゥオーモ、洗礼堂、カンポサイト(納骨堂)は、1987年に世界遺産に登録されました。

1層目の基板の部分はブラインド・アーケードになっている
©iStock 1層目の基板の部分はブラインド・アーケードになっている

場所

ピサはイタリア中部、トスカーナ州にある人口約9万の県都。フィレンツェから約85㎞に位置しており、日帰りで訪れることも可能です。

かつて海運で発展したピサは、11世紀にはジェノヴァやアマルフィと並ぶ、イタリア海洋国家のひとつに数えられていました。アルノ川が流れる町には、ピサの斜塔やドゥオーモなどの世界遺産以外にも、歴史ある教会や国立美術館などの見どころがあります。

ドゥオーモ広場について

緑の芝生が広がるドゥオーモ広場にドゥオーモ、ピサの斜塔、洗礼堂、カンポサント(納骨堂)といった世界遺産に登録されている中世の建物が集まっています。

ドゥオーモの内部。白黒の大理石で飾られている
©iStock ドゥオーモの内部。白黒の大理石で飾られている

1068年から50年かけて建設されたドゥオーモは、正面にある4層の柱列が美しいピサ・ロマネスク様式の最高傑作。設計者の名前がつけられたボナンノ・ピサーノの扉は、イタリア・ロマネスク彫刻の代表作と言われています。

奥行き100m、幅約30mの十字の形をした大きな建物で、内部にはジョヴァンニ・ピサーノによる説教壇、ガリレオのランプなどがあります。ガリレオのランプは、ガリレオがこのランプが揺れ動く様子を見て「振り子の法則」を発見した、と言われることからそう呼ばれています。

優雅なロマネスク建築の洗礼堂
©iStock 優雅なロマネスク建築の洗礼堂

ドーム型をした洗礼堂(バッティステロ)は、12世紀半ばから14世紀にかけて建てられたもの。列柱、アーチ、尖塔を組み合わせたデコレーションが見事です。内部にはお風呂を彷彿とさせる洗礼槽があります。音響効果がとてもいいことから、毎時00分と30分に音響パフォーマンスを開催しています。

ブッファルマッコの『死の凱旋』
©iStock ブッファルマッコの『死の凱旋』

大理石の壁で囲まれたカンポサント(納骨堂)には有名な『死の凱旋』ほか、さまざまなフレスコ画が展示されています。

ピサの斜塔の歴史

ピサの斜塔の歴史
©iStock 夏のシーズン中は夜も見学できる

ピサの斜塔は1173年に建設が始まり、完成までには199年もの歳月を要しました。
塔の基礎が築かれたのが1173年で、1178年には2階部分、1185年には3階まで進んだものの、地盤が不安定だったことから傾き始めます。

1272年に建設が再開されると、傾きを補正するために片側を高くするなどしながら1319年に7階部分が完成。1372に最上部に鐘楼が取り付けられました。

1580年代にピサ大学に通っていたガリレオ・ガリレイが、斜塔から物を落とし「落下の法則」の実験をしたというエピソードは有名です。

傾きが増大したため、1990〜2001年にかけて構造強化の工事が行われ、5.5度から現在は3.99度の傾斜で安定。高さは北側が55.22m、南側が54.52mと約70㎝の差があり、垂直方向からは3m傾いています。

ピサの斜塔の内部

ピサの斜塔の内部
©iStock すり減った螺旋階段

塔の内部には251段の螺旋状の階段があり、塔の最上部まで上ることができます。
大理石の階段は長い年月を経て、人が歩くところだけすり減りピカピカ。おまけに重心が内部に向いているのと、傾いているため、階段を上りだしたとたんに平衡感覚がおかしくなった感覚になります。

斜塔の屋上から望むピサの町並み
©iStock 斜塔の屋上から望むピサの町並み

屋上に出る直前の階段は、螺旋のカーブが急でステップも小さいので気をつけて。
がんばって屋上に出ると、歴史のあるピサの町並みが一望でき、疲れが吹き飛びます。

ピサの斜塔への行き方

ピサの斜塔への行き方
©iStock 小さなピサ中央駅

フィレンツェからの行き方

フィレンツェ中央駅からトレニタリア鉄道(fs線)の普通列車(R)か快速(RV)で、ピサ中央駅(Pisa Central)まで49分〜2時間3分。便数も多く気軽に利用できる。

ピサ中央駅からの行き方

ピサ中央駅からドゥオーモ広場までは2㎞ほどの距離で、バスで約10分、徒歩だと約30分。駅に向かって左側、ロータリー橫にあるバス停No.1からバスLAM rossa線や4番に乗ります。循環路線で空港〜中央駅〜ドゥオーモ広場を結んでいるので、逆方向に乗らないように注意。

予約について

予約について
©iStock 世界中から観光客が訪れる

ピサの斜塔は入場制限があります。そのため、事前に予約をするのがおすすめです。

予約は以下のサイトから(英語)。希望日の20日〜前日まで予約が可能です。
サイトから日にちと15分刻みの時間を選び、チケット残数を確認、予約人数を入れたら購入画面へ。氏名やカード情報を入れて決済が完了すると、チケットのダウンロード画面になるので、忘れずプリントアウトをしましょう。

当日はプリントアウトしたチケットを持参し、予約時間の10分前にはピサの斜塔入口前に並びます。

当日予約の場合はピサの斜塔入口ではなく、ドゥオーモ広場、ピサの斜塔近くのチケットオフィスで購入を。ただし、数時間後までいっぱいということもあります。
なお、8歳未満は見学不可、18歳以下は大人の同行が必要となっています。
※2020年5月30日に再オープンしていますが、以前とは規定が変更されているので最新情報をご確認ください。

予約サイト

ピサの斜塔を登る際の注意点

ピサの斜塔を登る際の注意点
©iStock 最後の階段を上って屋上へ

ピサの斜塔の階段は狭く、すれ違うのもやっとのため、カメラや身につけられる貴重品以外の荷物を持って入ることはできません。
カバンなどはクロークルームに預けなくてはならないので、並ぶ前にまずはクロークルームで手続きをすませましょう。荷物を預けると引換券をくれるので、なくさないように注意。

また、800年以上前から数え切れないほどの人が歩いた石の階段は、中央部がすり減って凹み、磨いたようにツルツルになっています。幅も細く上りにくいので、履き慣れた底が滑りにくいスニーカーなどで行くことをおすすめします。

基本情報とまとめ

基本情報とまとめ
©iStock 傾きを支えるトリック写真はマスト!

斜塔/トッレ ペンデンテ(カンパニーレ)Torre Pendente(Campanile)

住所
Piazza del Duomo 17
アクセス
ピサ中央駅からバスで約10分
料金
€20
営業時間
4〜9月 9:00〜20:00(6月16日 9:00〜17:00、6月17日〜8月31日 9:00〜22:00)
10月 9:00〜19:00(10月1~6日 9:00~20:00)
11月 9:00~18:00(10月1~3日 9:00~19:00)
12月 9:00~18:00(12月23~31日 9:00~19:00)
2025年1月 9:00~18:00(1月1~6日 9:00~19:00)
2025年2月 9:00~18:00(2月22~28日 9:00~19:00)
2025年3月 9:00~19:00
※入場は閉場の30分前まで
定休日
無休

フィレンツェからひと足延ばして、ピサの斜塔がどのくらい傾いているかを自分の目で確かめてみませんか。ピサの斜塔を含む世界遺産の見どころを巡るのに、半日は見ておくのがおすすめです。

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TEXT: グルーポ ピコ
PHOTO: iStock

初回掲載: 2020年3月4日

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2020年6月9日現在、イタリアへの日本からの観光目的の渡航はできません。渡航についての最新情報、情報の詳細は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL:  https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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