欧州最大級! フラサッシ鍾乳洞徹底ガイド(イタリア・マルケ州)

公開日 : 2019年08月26日
最終更新 :
薄暗い中、乳白色に輝く鍾乳洞内部
薄暗い中、乳白色に輝く鍾乳洞内部

イタリア中部に位置するマルケ州は、東はアドリア海に、西はアッペニーニ山脈とシベリーニ山脈に接する自然の豊かさが魅力の州です。そのマルケ州の観光スポットのフラサッシ鍾乳洞(Grotte di Frasassi)は、州都のアンコーナ北東部の内陸エリアにある鍾乳洞で、日本人観光客の訪問が少なく、イタリア観光の隠れた名所ともいえます。ペルージャ、アッシジ、ウルビーノなどの有名観光地への訪問に、フラサッシ鍾乳洞も加えてみてはいかがでしょうか。

フラサッシ鍾乳洞とは!?

フラサッシ鍾乳洞とは!?
自然の作り出す白色の美しさが目に眩しい”蝋燭の間”

イタリア・マルケ州でぜひとも訪れたい観光スポットが、フラサッシ鍾乳洞です。イタリア名は、グロッテ ディ フラサッシ(Grotte di Frasassi)で、フラサッシにある洞窟達という意味になります。

ヨーロッパの鍾乳洞といえば、スロヴェニアにあるポストイナ鍾乳洞が有名で、ヨーロッパ最大規模と言われています。フラサッシ鍾乳洞もその大きさでは負けておらず、最大深度がなんと300メートル(ポストイナ鍾乳洞は115メートル)です。通常の観光用として公開されている徒歩での散策ルートは、全長1.5キロメートルの長さです。

フラサッシ鍾乳洞は、(現在のところ)あまり有名ではありません。それは、そフラサッシ鍾乳洞の存在が発見されたのが、1970年代だったということも影響しているかもしれません。調査や研究の過程を経て、観光地としてルートが整えられたのは、1980年代に入ってからとのこと。世界中の人に知られるには、まだ時間がかかりそうです。

ジェンガ、サン ヴィットーレ キウセ修道院と山並み
ジェンガ、サン ヴィットーレ キウセ修道院と山並み

では、鍾乳洞は、どこに、どうやってできるのでしょうか。

上の写真のように、奥に大きな山がそびえ立っています。フラサッシ鍾乳洞は、この山の深部にあります。

フラサッシ鍾乳洞の発見が、比較的最近だったことは先述しましたが、近くにある小さな鍾乳洞は1940年代に発見されていました。1971年、7人の洞窟探検家グループがそれらの小さな鍾乳洞の中で、存在するはずのない空気の流れを感知したのが、フラサッシ鍾乳洞の発見のきっかけでした。その空気の出どころを突き止めたことによって、現在知られる巨大な鍾乳洞を「掘り当てた」のだそうです。

太古、このエリアは海の底でしたが、およそ140万年前に地殻変動によって隆起し、陸地となりました。土壌には海地の特徴として石灰岩が多く含まれており、深い谷地を作り出しているセンティーノ川や雨水などのはたらきによって石灰岩が浸食され、空洞ができたと考えられています。

その空洞に洞窟生成物(鍾乳石などと称される)が形成され、つららや台座のようなフォルムを作り出し、フラサッシ鍾乳洞となったのです。

フラサッシ鍾乳洞の探検の仕方

フラサッシ鍾乳洞の探検の仕方
グループで見学するので迷子になることはありません

鍾乳洞内の探検では、3つのコースが用意されています。ただし、そのうち2つのコースは上級者向きで、「探検時間」も長く、特別な装備も必要になります。よって、一般的な「探検コース」を紹介します。

一般的な「探検コース」は、3キロメートル程度を歩くことになります。途中、写真のようなアップダウンもありますので、バギーなどの利用はできません。また、自由に見学できるのではなく、グループでガイドの指示と説明のもとでの行動となります。

ひとつのグループは、時間帯にもよりますが最大で50人ほど。イタリア語での案内が基本ですが、英語での案内も時間を調整して選ぶことができます。

入口ゲートを抜けてガイドと共にいざ出発
入口ゲートを抜けてガイドと共にいざ出発

鍾乳洞の入口ゲートを抜けると、そこからはグループを担当してくれるガイドと一緒に行動します。ゲートの後にすぐに大きな自動扉があり、その先から鍾乳洞に入るまでは上の写真にあるトンネルを300メートルほど進みます。

その先に、もうひとつの自動扉が設置されています。これは、鍾乳洞内部と外気を遮断することによって、気圧の変化による鍾乳洞内部の環境悪化を防ぐ意味があるのだそうです。

石灰石に含まれる成分によって色味が微妙に変わる鍾乳石
石灰石に含まれる成分によって色味が微妙に変わる鍾乳石

散策コースは大きく5つのエリアに分けられています。

最初のエリアは、(1)ABISSO ANCONA(アンコーナの深淵)です。

こちらは、コースに入った瞬間にいきなり高さ200メートル、長さ120メートルの大空間が広がりますので、そのインパクトに圧倒されることでしょう。高さ200メートルといえば、建物でいうと60階建て以上になるからです。このような巨大な空洞が山腹内にあるのが不思議で、神秘的です。

さらに、つららのように垂れ下がる鍾乳石と、そのしずくによる堆積物がいたるところにあります。代表的なものは、以下のような名称で呼ばれていて、それらを順に見学して回ります。

・LAGHETTO CRISTALLIZZATO:クリスタルの湖
・CASCATA DEL NIAGARA:ナイアガラの滝
・CASTELLO FATINE:妖精の城
・I GIGANTI:巨人たち

ちなみに、この(1)エリアのみ写真撮影は禁止になります。

そして、(2)エリア以降では、写真撮影が可能です。鍾乳洞内に整備されたコース(約1キロメートル)に沿って、見学していきましょう。

(2)SALA 200(200の部屋) …… 200メートルの長さがある空間
(3)GRAN CANYON(グランドキャニオン)…… グランドキャニオンのような鍾乳石が見られる空間
(4)SALA DELL'ORSA(くまの部屋) …… くまのようなフォルムの鍾乳石がある空間
(5)SALA INFINITO(永遠の部屋) …… ループ状になっている空間

途中、25メートル以上の深さのある井戸や「魔女の城」と呼ばれる場所があったり……。人間が造ったのものではない、自然の造形を観ることができ、その多様さや複雑さに驚くことでしょう。写真ではなかなか伝わらないのが、歯がゆいところです。現地で、その迫力を実感してください。

光は完全に遮断されているので、あるのは人工の柔らかな光のみ
光は完全に遮断されているので、あるのは人工の柔らかな光のみ
限りなく透明に近い水を湛え、神々しささえも感じる光景
限りなく透明に近い水を湛え、神々しささえも感じる光景
想像を超える大きさは、驚愕必至
想像を超える大きさは、驚愕必至
パイプオルガンのパイプと呼ばれている
パイプオルガンのパイプと呼ばれている

フラサッシ鍾乳洞へのアクセス方法

フラサッシ鍾乳洞へのアクセス方法
見学するグループ毎にバスに乗って移動して探検は始まる

フラサッシ鍾乳洞を見学するには、まず入場券を購入する必要があります。この入場券売り場が、実はフラサッシ鍾乳洞の入り口から1キロメートル以上離れた場所にあります。まず、ここに行き、希望する時間のチケットを手に入れます。

自動車(タクシーやレンタカー)でアクセスする際は、下記の住所をNAVIに登録しましょう。高速道路のAncona Nord出口から、もしくは、アンコーナファルコナーラ空港から自動車で25分程度です。列車でアクセスする場合は、Genga駅から徒歩約10分です。

■フラサッシのゴーラデラロッサ州立自然公園の駐車場およびチケット売り場(Grotte di Frasassi - Parcheggio e Biglietteria Parco Naturale Regionale Gola della Rossa e di Frasassi)
・住所:Località Palombare Ferro, 41, 60040 San Vittore AN

観光シーズンとなる3月から10月までは、午前10時から午後6時まで10分毎に「探検ツアー」が出発します。ただ、観光客の数が少なければ間引きしての出発となります。

入場料金は、大人18ユーロで、6~14歳が12ユーロ、5歳以下は無料となっています。また、このチケットで、「サン ヴィットーレ キウセ修道院」内にあるジェンガ考古学博物館とジェンガ美術館も入場可能です。

ナヴェッタと呼ばれる送迎バス乗り場
ナヴェッタと呼ばれる送迎バス乗り場

チケット売り場には、巨大な駐車場も併設され、無料で駐車できます。ここから鍾乳洞の入口までは、ナヴェッタ(Navetta)と呼ばれる送迎バスで移動します。チケットを受け取る際、自分が乗るべきナヴェッタの発車時間を告げられます。

放送案内が逐一入りますが、発車時間の10分前には、乗り場に移動しておきましょう。この送迎バスで、同じバスに乗った人たちと一緒に鍾乳洞を探検することになります。

記念写真も素敵な旅の想い出になります
記念写真も素敵な旅の想い出になります

さて、鍾乳洞内で唯一写真撮影ができないABISSO ANCONA(アンコーナの深淵)エリアですが、写真撮影サービスがあります。大きな鍾乳石の前で撮影された記念写真を見学後に購入することができます。四つ切サイズが一番小さいものの、かなり大きなサイズの記念写真です。

ちなみに、鍾乳洞内の気温は14度前後です。

真夏であっても、かならず上着を持参してください。また、ショートパンツだと寒いと感じるかもしれません。何せ往復で3キロメートルほど、約1時間30分の見学になりますから。

【おまけ】あわせて立ち寄りたい秘境の礼拝堂

【おまけ】あわせて立ち寄りたい秘境の礼拝堂
山中深くの洞窟内に佇む神秘的な建物

フラサッシ鍾乳洞を見学した後、一緒に観て欲しい場所があります。「Eremo di Santa Maria Infra Saxa」です。呼び名がいくつもあり、「Santuario di Frasassi」とも呼ばれています。

洞窟の空間内にある建物は、修道女のために1029年に建てられたものなのだとか。山の中にあり、交通網がなかった時代は、たどり着くことが相当に大変だったのではないでしょうか。まさに、修験者のための場所なのです。

フラサッシ鍾乳洞から500メートルほど進むと、右側に進入口があります。車道から700メートルほど、坂道を登ったところにあります。一見の価値ありです。一時の静寂をお楽しみください。

いかがでしたか。ヨーロッパ最大級の規模を誇るフラサッシ鍾乳洞(Grotte di Frasassi)を紹介しました。太陽の光が燦々と照りつけ、真夏でも14度ほどと涼しいフラサッシ鍾乳洞へでかけてみませんか。

筆者

イタリア特派員

丹羽 淳子

イタリア、アンコーナ県の海辺の町に住んでいます。毎日を気ままに過ごすことが堂に入ってきました。

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