ドイツ・ドレスデンの聖母教会を100倍楽しむ完璧ガイド!

公開日 : 2019年09月03日
最終更新 :
エルベ川から望むドレスデンの旧市街
エルベ川から望むドレスデンの旧市街

ドイツ東部ザクセン州の州都、ドレスデン。「エルベ川のフィレンツェ」と称され、バロック建築の数々が川沿いに佇む美しい都です。この街には、訪れる人々を魅了する名所がいくつもありますが、なかでも外せないのが聖母教会(ドイツ語では、Frauenkirche:フラウエンキルヒェ)。教会内部は思わずため息がでるほど美しく、またこの教会がたどってきた歴史も非常に興味深いものです。聖母教会の魅力を案内します。

瓦礫から甦った美しいバロックの教会 

瓦礫から甦った美しいバロックの教会 
聖母教会の外観

ドレスデンの旧市街に美しい姿で佇む聖母教会(Frauenkirche)。もともとは11世紀に建てられましたが、その後改築を繰り返し、現在の形になったのは1726~1743年。バロック様式のプロテスタント教会です。

ところが、第二次世界大戦末期の1945年2月13・14日。英米連合軍によるドレスデン大空襲により、ドレスデンは火の海と化しました。聖母教会も内部にこもった熱風により、1万2千トンの教会ドームが崩れ落ちてしまったのです。

戦後、ドレスデンは東ドイツの街となったため、聖母教会の再建は東ドイツ政府になおざりにされ、45年以上に渡って瓦礫のまま放置されていました。

しかし、東西ドイツが統一後、聖母教会の再建が全世界に呼びかけられ、世界中から寄付が集まりました。1994年に再建工事がスタートし、11年の歳月をかけて聖母教会は元の美しい姿に甦ったのです。

2005年10月には、聖母教会の再建を祝う式典が行われ、6万人もの人が集いました。筆者も当時そこに行きましたが、喜びと感動で満たされたドレスデン市民の姿が、とても印象的だったのを記憶しています。

また、聖母教会再建には、瓦礫となったもともとの石材も利用され、「世界最大のジグソーパズル」といわれた大規模なプロジェクトでした。ちなみに回収した瓦礫8,425個のうち3,500個ほどが使用されたそうです。

教会の外壁の石の様子
教会の外壁の石の様子

聖母教会の外壁をご覧いただくと、黒い箇所がいくつもあります。この部分が瓦礫を利用した箇所です。

平和のシンボルとしての教会

平和のシンボルとしての教会
塔の上で佇む和解の十字架

聖母教会を崩壊させた、戦時下の英米軍によるドレスデン大空襲。

この空襲で2万5千人から3万5千人の市民が犠牲になったといわれています。また、軍の施設などはドレスデンの郊外にあったものの、そこは無傷でした。英米軍は、最初から一般市民を狙ったのではないかともいわれています。

聖母教会崩壊後55年の年。焼け落ちた十字架が新たに製作されたのですが、空襲の当事国であるイギリスから贈られました。

これは、イギリス市民や王室の寄付によって実現し、またドレスデン大空襲で爆撃を行ったパイロットの息子が製作に携わったものでした。この和解の証は、今も聖母教会の塔の上で美しく輝いています。

焼け落ちた元の十字架
焼け落ちた元の十字架

また、焼け落ちた元の十字架が瓦礫のなかから見つかっていますが、そのままの形で戦争の記念碑として聖母教会内部に展示されています。

さらには、旧東ドイツ時代から若者がロウソクをもって瓦礫に集まり、平和運動のシンボルとなっていた聖母教会。今でも毎年、空襲のあった2月13日には、人々がロウソク手に聖母教会に集い、追悼と平和を祈ります。

この日にドレスデンに行く予定の方は、共に平和を祈る集いに参加してみてはいかがでしょうか。

美しい聖母教会の内観に感動!

美しい聖母教会の内観に感動!
豪華な祭壇 画像提供:聖母教会 ©Juergen Vetter

聖母教会の中に足を踏み入れると、華麗なバロック様式の内装に思わず息をのみます。全体に明るい色が基調となって、柔らかく優しい印象です。

また、祭壇の上には、壮大なパイプオルガンが姿を現しています。聖母教会が崩壊する前までは、1736年に製作されたゴットフリード・ジルベルマン作のオルガンがありましたが、損傷が大きすぎて修復は不可能でした。

現在あるオルガンは、ストラースブルグのオルガン製作者ダニエル・ケルン製作のもの。19世紀、および20世紀の音楽にも相応しい響きを奏でることができるそうです。

美しい丸天井 画像提供:聖母教会 ©Alexander Furhmann
美しい丸天井 画像提供:聖母教会 ©Alexander Furhmann

また、柱のない大きな丸天井が華麗で、そこには四人の福音史家であるマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネが描かれています。

教会での催しにも自由に参加してみよう!

教会での催しにも自由に参加してみよう!
礼拝の様子 画像提供:聖母教会 ©Guenter Beahr

聖母教会は、礼拝や演奏会、催し物がなければ、無料で見学が可能です。また、礼拝にも誰でも参加することができます。そして、ちょっとしたお話と、オルガン演奏が聴ける時間があります。

●入場時間
・月~土曜:10:00~16:00、日曜:12:30~16:00

●礼拝が行われる時間
・日曜:11:00、18:00(18:00は英国国教会の礼拝)、木曜:18:00

●説法、オルガン演奏
・12:00(月~土曜)、18:00(月~水曜、金曜)

聖母教会での演奏会の様子 画像提供:聖母教会 ©Susann Hehnen
聖母教会での演奏会の様子 画像提供:聖母教会 ©Susann Hehnen

また、聖母教会は、最高のコンサートホールでもあります。いろいろなクラシック音楽やオルガンの演奏会などが行われます。公式サイトに演奏会の予定が掲載されています。美しい教会で聴く音楽は、格別です。聖母教会でのすばらしい響きを、ぜひ生で味わってください。

塔に登って街を一望しよう!

塔に登って街を一望しよう!
ルター像から見上げる教会の塔

美しいドレスデンの街を一望するなら、有料ではありますが、聖母教会の塔に上るのがおすすめです。

まず、Gの入口に行ってください。そこからエレベーターで24メートルの地点まで上がります。細い階段を使って塔を2.5周して上がっていきますが、これがかなりきつい。

その後、さらに急な階段を上がると、67メートルの高さにある塔に到着。そこからは、ドレスデンの街とその周辺を一望できます。絶景が待っています。

●塔に登れる時間
・3~10月:月~土曜10:00~18:00、日曜12:30~18:00
・11~2月:月~土曜10:00~16:00、日曜12:30~16:00

●料金
・大人:8ユーロ、子供、学生、年金生活者ほか5ユーロ、家族20ユーロ
※ドレスデンカード保持者は2ユーロ割り引き

美しく甦った聖母教会 画像提供:聖母教会 ©Joerg Schoener
美しく甦った聖母教会 画像提供:聖母教会 ©Joerg Schoener

いかがでしたでしょうか。戦争に翻弄され、その後ドレスデン市民の強い熱意で再建が実現し、美しい姿が甦った聖母教会。今では平和と和解のシンボル的な存在です。

美しい教会の中に座って、パイプオルガンの響きに耳を傾けると、ドレスデン市民の平和への思いがひしひしと感じられます。ドイツに来られましたら、この感銘深い教会にぜひ立ち寄ってください。

筆者

ライプツィヒ特派員

シェーファー 玲子

2008年夏よりドイツ中東部の町ライプツィヒ在住。現在はライプツィヒにてフリーランスと主婦業に従事している。

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