城のような博物館「Citéco 」2019年6月フランス・パリに誕生!

公開日 : 2019年05月31日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき
Citécoガイヤール邸のファサード ©MichaelTubiana
Citécoガイヤール邸のファサード ©MichaelTubiana

フランス・パリ17区に2019年6月14日(金)にオープンする「シテコ(Citéco)」は、ヨーロッパ初となる「経済」をテーマにした博物館です。展示内容もさることながら、注目したいのはネオ・ルネッサンス様式の建築。フランス・パリはもちろんのこと、世界中から大きな関心が寄せられる博物館「シテコ」を紹介します。

ヨーロッパ初の「経済」博物館

ヨーロッパ初の「経済」博物館
Citéco ©Banque de France, Agence Confino

経済をテーマにした世界初の博物館は、2006年メキシコに作られたインタラクティブ経済博物館(Museo Interactivo de Economia)でした。今回、フランス・パリにオープンするのは、ヨーロッパ初の経済博物館となります。

「経済」と聞くと、どうにもとっつきにくく思える人も多いのではないでしょうか。白状すると筆者も同じです。けれどもこの「シテコ(Citéco)」は、筆者のような経済学オンチでも足を運びたいと思わせるものを持っています。

Citéco ©Banque de France, Agence Confino
Citéco ©Banque de France, Agence Confino

その理由は、まず、展示が分かりやすいということ。内容は、次のように色分けされた6つのテーマに沿って展開します。

鮮やかなブルーの「交易」。会社、銀行、協会などの「実行者」については赤。「市場」は緑。経済危機などを含む「不安定さ」については茶色。公的機関の役割などを明らかにする「規則」はグレー。最後の「宝物」は、黄色で、ここでは、貝殻から、小切手、金まで含むありとあらゆる形の通貨を扱います。

明確に色分けされたこれらのテーマごとに、デジタル技術を駆使し、インタラクティブに、ゲーム感覚で親しめる展示が特徴となっています。たとえば、交渉ごとのシミュレーションゲームなども準備されていて、ひと味違った経済へのアプローチを提案します。

歴史的建造物、ネオ・ルネッサンス様式のガイヤール邸

歴史的建造物、ネオ・ルネッサンス様式のガイヤール邸
Citéco 屋上のテラス ©CharlotteDonker

また、展示内容に劣らず魅力的なのが、その建築物ガイヤール邸! 1999年に歴史的建造物指定を受けており、その歴史はなかなか華やかなものです。

パリ17区とはいっても、8区のモンソー公園に近いこのあたりは、17世紀ごろにはモンソーの草原が広がっており、畑や牧草の茂るのどかな地域でした。それが、19世紀後半、パリ拡張に伴い都市化していくのです。

この区域は、当時からマルゼルブ通りとヴィリエ通りという二つの大きな通りに近く、都心からの移動が便利な場所だったので、当時のブルジョワたちが好んで売りに出された土地を買ったと言います。グルノーブル出身の銀行家エミール・ガイヤール(Emile Gaillard)も、その一人でした。

また、この地域には、作曲家ドビュッシー(Claude Debussy)や女優サラ・ベルナール(Sarah Bernhardt)などの芸術家も居を構えていました。

ショパンの弟子であり美術に造詣が深かったエミール・ガイヤール

ショパンの弟子であり美術に造詣が深かったエミール・ガイヤール
Citéco ©CharlotteDonker

エミール・ガイヤールの祖父は、18世紀後半、グルノーブルに銀行を創業しており、父はグルノーブル市長を務めたこともある人物でした。エミールは、その銀行のパリ責任者として、鉄道への投資や、シャンボール伯の財政管理、また文豪ヴィクトル・ユーゴーとの契約なども成し遂げた人でした。

エミールの才能は銀行仕事にとどまらず、音楽・芸術部門にも発揮されました。なんと、エミールは、ショパンのもっとも優秀な生徒であったと言います。実際、ショパンはエミールへと明記したマズルカやワルツを残していますし、エミール自身もピアノ曲を作曲しています。

また、中世とルネッサンス美術の愛好家で、その時代の家具や装飾品、タピスリーなども多く蒐集していました。エミールが、後のガイヤール邸を建てるべく土地を買ったのは、ひとつには、自宅に収納しきれなくなったアートコレクションの収納場所確保もあったようです。

建築家ジュール・フェヴリエ(Jules Février)設計によるガイヤール邸が完成したのは、1882年のことです。そのころ、フランスではロマン主義の影響で中世美術や建築が流行っていました。ネオ・ルネッサンス様式のガイヤール邸は、見るからにロワール川近くのお城を彷彿させます。なかでも、ブロワ城のルイ12世の翼と呼ばれる部分に似ています。

実は、ブロワ城は1840年に歴史的建造物指定を受け、大きな修繕工事をしたばかりでした。ジュール・フェヴリエは、この時のブロワ城の建築調査を参考に設計。またガイヤール邸の内装は、ブロワ城の修復工事に携わった一流の職人たちが手がけました。

フランス銀行の支店に

フランス銀行の支店に
工事中のガイヤール邸ドゥフラスホール ©XavierRauffet

エミール・ガイヤールの死後、ガイヤール邸を購入したのはフランス銀行です。建築家アルフォンス・ドゥフラス(Alphonse Defrasse)に依頼し、改装工事をののち、1923年パリ・マルゼルブ支店として生まれ変わったガイヤール邸は、2006年まで活用されました。

個人の邸宅を、オフィスに作り変えるというこの改装も、かなり大掛かりなものではありましたが、優秀な建築家であったアルフォンス・ドゥフラスは、ガイヤール邸の魅力を損なわぬ改装を施し、最初にデザインしたジュール・フェヴリエもこれを称賛する言葉を残しています。

ビストロやブティックだけの利用も可

ビストロやブティックだけの利用も可
Citéco ©Banque de France, Agence Confino

今回、博物館「シテコ」として生まれ変わるのに要した改装工事は、2012年から始まりました。3つのレベルに広がる常設展は2400平方メートルの広さ。加えて特別展用の430平方メートルも控えています。

140年の歴史を持つ美しい城で、経済史200年を紐解く経験、経済に興味がある人のみならず、通り一遍のパリ観光を済ませたリピーターの方には特におすすめです。

「シテコ」の中庭には、軽食が取れるビストロ、一階には、経済やガイヤール邸に関する商品を置くブティックが開店します。どちらも、博物館に入館せずとも利用可能ですので、ぜひ一度お訪ねください。

いかがでしたか。フランス・パリ17区に2019年6月14日(金)にオープンする「シテコ(Citéco)」を紹介しました。近・現代経済の移ろいを観に、「シテコ(Citéco)」へ出かけてみてはいかがでしょうか。

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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