リール美術館で、城塞都市の鳥瞰が可能に!(フランス・リール)
フランス北部のリールには、200年以上の歴史を持つリール美術館があります。所蔵作品6万点、年間25万人以上の入館者を誇るフランス有数の美術館のひとつです。このリール美術館の「立体模型図の部屋」は、2018年春より改修のため閉鎖されていましたが、2019年3月16日(土)にリオープンの運びとなりました。細やかな修復を受けたレリーフの数々を紹介しましょう。
17世紀から19世紀にかけて作られた立体模型図
2019年3月16日(土)にリオープンする「立体模型図の部屋」は、その名の通り、14の城塞都市の立体模型図を展示する部屋です。
これらの立体模型図は、ルイ14世統治下にあった1668年からナポレオン3世の治める1870年にかけて作られたものばかりです。どれも、軍事利用を目的に、600分の1のサイズで作成されました。現存するのは約100点のみですが、当時は、150の城塞都市について約260点の立体模型図が作られたそうです。
リール美術館に並ぶ14の城塞都市
リール美術館に展示されているのは、現存のもののうち14点。現在のフランスの6都市、ベルギーの7都市、オランダの1都市を扱っています。具体的な都市の名前と作成年は、次の通りです。
【フランス】
アヴェヌ・シュル・エルプ(Avesnes-sur-Helpe)1826年
ベルグ(Bergues)1699年
グラヴリヌ(Gravelines)1756年
リール(Lille)1740年
エール・シュル・ラ・リス(Aire-sur-la-Lys)1743年
カレ(Calais)1691年
【ベルギー】
アト(Ath)1697年
シャルルロワ(Charleroi)1695年
ムナン(Menin)1702年
ナミュール(Namur)1750年
オードナルド(Audenarde)1746年
トゥルネ(Tournai)1701年
イープル(Ypres)1701年
【オランダ】
マーストリヒト(Maastricht)1752年
これら14の立体模型図は、合計すれば、400平方メートルにもなる規模。リニューアルされた1,300平方メートルの部屋の真ん中に置かれるのは、もちろん、リールの模型図です。
迷路のような城塞都市に足を踏み入れる体験
今回、立体模型図の修理に当たったのは、総勢15名の専門家です。模型図の修繕だけでも大きな仕事ですが、今回は、一部のデータのデジタル化も同時に行われ、見学者の好奇心をさまざまな側面から満たす工夫がされています。たとえば、ヴァーチャル・リアリティを利用して、18世紀の街並み散策の体験ができるコーナーも設けられています。
城塞都市は、堀と城壁が幾重にも街を取り囲んでおり、非常に複雑なつくりをしています。とはいっても、これらの街に行ったことがある人はよくわかると思いますが、山地に作られていない限り、城塞都市のなかに身を置いても、その複雑なつくりを感じることはほとんどありません。
その点、緻密に作られたこの立体模型図は、迷路のような街の様相を俯瞰するのにピッタリといえます。だからこそ、軍事的に重要な役割を果たしたのでしょう。ドローンはもちろんのこと、気球すら実用化されていなかった時代に、これだけ細かに正確な模型図が作られたことに驚きます。
ある意味、実際にその街へ足を運ぶよりも、立体模型図を見たほうが、街の構造や歴史的な変遷がうかがえるともいえます。歴史的にも美術的にも価値のある貴重な展示物。リール美術館を訪れた際は、忘れず、「立体模型地図の部屋」にも足を運んでみましょう。
いかがでしたか。リオープンしたリール美術館の「立体模型図の部屋」を紹介しました。鳥になった気持ちで、いろいろな都市を上空から眺めてみませんか。
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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