初秋に訪れたいヴェール・ボワ城 フランス・リール郊外にあるミニヴェルサイユ!?
初秋に訪れたいヴェール・ボワ城(Château du Vert-Bois)を紹介します。ヴェール・ボワ城は、フランス北部のリール郊外にある個人所有の城です。広い敷地の中に隠れるように建ち、周辺の木々や草花とで奏でる景観は、まるでミニヴェルサイユのようです。こぢんまりとしながらも、中は18世紀の調度品で統一され、見応えのあるヴェール・ボワ城を紹介します。
メセナの役割を担うプルヴォスト家
17世紀から18世紀にかけて建てられたヴェール・ボワ城が、現在の所有者であるプルヴォスト(Prouvost)家のものとなったのは19世紀後半のことでした。その頃の当主は、アルベール=フェリックス・プルヴォスト。その息子たちの世代で、プルヴォスト家は毛織物業を起こします。
「ルーベの毛織物」と呼ばれたこの企業は、大戦中の被害をものともせず、1960年代には一日に生産する糸が地球を40周すると言われるまでに成長を遂げました。なんと、1957年にはイギリスのエリザベス女王、1960年にはソ連第4代最高指導者のニキータ・フルシチョフが見学に訪れるほどの企業でもありました。
その次の世代で、プルヴォスト家は、プルヴォスト・セッタントリオン財団(Fondation Prouvost Septentrion)を設立し、芸術や文化遺産の保護に積極的に乗り出します。彼らの芸術への造詣は深く、古代芸術から現代芸術までカバーしていて、多くのメセナ(企業による芸術・文化の援護活動)的な働きをしています。
たとえば、ヴィルヌーヴダスクのLaM現代美術館が所蔵する美術品の多くは、プルヴォスト家寄贈によるものです。芸術や文化は広く人々と分かち合うものだという信念を通し、住居であるヴェール・ボワ城も公開しているのです。
18世紀に統一された内装
現在の当主は、プルヴォスト財団を作ったアルベール=オーギュスト・プルヴォストの息子のギラン・プルヴォストです。彼は、ヴェール・ボワ城にずっと住んでいるわけではなく、休日や週末を過ごしに来るのだといいます。それでも、城の中には家族写真が飾ってあり、住民の温もりを感じます。
内装は、すべて18世紀のスタイルで統一され、蒐集家一家なだけあり、さりげなく、美術的価値の高いものが並びます。上の写真は、ダイニングルームです。内部を撮影した写真のうち、1枚だけ掲載許可を得ることができた貴重なものです。
この写真ではわかりませんが、城内には、ナポレオン・ボナパルト由縁のものがそこかしこに置かれています。これは、上述したアルベール=オーギュスト・プルヴォストの妻アンヌ・ド・メグレがナポレオンの弟であるリュシアン・ボナパルトの子孫だったことに由来します。
見学料は、9ユーロ/7.5ユーロです。
一日かけて満喫したい広い庭園
ヴェール・ボワ城は、60ヘクタールの広い敷地に建つ城です。敷地内には、さまざまなスタイルの庭園が造られていて、それを巡るのも楽しいところです。城より奥は、緑地地帯と森が続き、これまた飽きることなく散策を楽しめます。
敷地内には著名な彫刻家による像がさりげなく建っていて、散策の合間には美術鑑賞もできるという特典つきです。
庭園への入場は、一年中可能です。開園時間は、以下の通りです。入場料は、大人2.2ユーロ、学生1.7ユーロ、11歳までの子どもは無料。
●ヴェール・ボワ城の庭園の開園時間
・火~金曜:11:00~18:00
・土曜:12:00~18:00
・夏季の日曜、祝日:14:00~18:30
・冬季の日曜、祝日:13:00~17:30
・8月の水~土曜:13:00~17:45
・8月の日曜:14:00~18:30
・休業日:月曜、8月の火曜、12月25日、1月1日
いかがでしたか。初秋に訪れたいヴェール・ボワ城を紹介しました。庭園は、ペットを連れての入園も可能ですし、ピクニックも自由にできます。かなり広く、飽きることはないでしょう。のんびりと1日を過ごすつもりで、ピクニックバスケットを持参してみてはいかがでしょうか。
初回掲載:2018年9月30日
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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