【バンコク編の編集者が実地体験】コロナ禍で変わったもの変わらないものとは?現地最新情報をレポート!

公開日 : 2021年12月17日
最終更新 :
感染対策に協力しましょう。ウイークエンドマーケットにて
感染対策に協力しましょう。ウイークエンドマーケットにて

2021年11月1日から入国に関する規制が緩和され、以前よりも訪問のハードルが下がったタイ。11月上旬時点ではオミクロン株のニュースもなかったため、今どうなっているのかを見てみたい! 見ておかなければ! いや、見ておくべきだ! 逸る気持ちを抑えきれない担当編集者が、帰国後14日間自宅待機の覚悟を決めて、バンコクへと飛び立ったのでした。バンコク新旧を知る旅のプロが体験した貴重な現地レポートです。

ツーリストエリアの現状と今後への期待

ツーリストエリアの現状と今後への期待
人影まばら、営業する店も少ないカオサン通り

まず、バンコクを代表するツーリストエリアはどうなっていたのでしょうか。

カオサン通りは、2020年初頭に歩道が整備され、安全かつ歩きやすくなった直後にコロナ禍に見舞われました。通りの主役だったバックパッカーの姿は消えてしまい、休業中のショップやゲストハウスが目立ちます。隣のタナオ通りに並んでいたアクセサリーや雑貨のショップは軒並みシャッターを下ろし、ところどころ「貸家」の張り紙があるなど、文字通りのシャッター街と化しています。昼はこんな状態ですが、夜には飲食店がオープンし、特に週末は活況を呈するとか。人出が増えると通りの入口でコロナウイルスワクチンの接種証明書提示を求められるなど、感染対策もしっかりと取られているそうです。

ウイークエンドマーケットはショップがぽつぽつ店開き
ウイークエンドマーケットはショップがぽつぽつ店開き

週末のお楽しみ、ウイークエンドマーケット。常に大勢の買い物客でごった返し、熱気の渦巻いていたこの場所。乾季で涼しい12月は足を運ぶのに最適の時期です。行き交う人はさすがに少なめながら、表通りに面した雑貨やインディースのアパレルショップは営業しているところが多く、そこそこ楽しめます。

悲しみのタラートロットファイ・ラチャダー
悲しみのタラートロットファイ・ラチャダー

カラフルなテントが規則正しく並び、俯瞰のアングルが人気の撮影スポットにもなっていたタラートロットファイ・ラチャダー。テントや飲食店は撤去され、ただの空き地に。以前を知る人には衝撃的な眺めになっていました。でも悲しむのはまだ早い。同じ経営母体が、11月29日に新マーケット「JODD FAIRS」をオープンしました。コンセプトはタラートロットファイ・ラチャダーをほぼ踏襲、手作り雑貨やオリジナルファッションのショップ、スナックやドリンクなどの飲食店が並び、タラートロットファイ・ラチャダーから移転したショップも多いとのこと。人気が高まりつつあるようで、いずれ取材に行くのが楽しみです。

■JODD FAIRS
・住所: Rama 9 Rd., Bangkok
・営業時間: 毎日11:00〜24:00
・アクセス: MRTブルーラインのプラ・ラーム・ナイン駅から徒歩4分
・URL: https://www.facebook.com/JoddFairs
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、営業時間が変更になる場合があります。詳しくは公式ウェブサイトで確認してください

ひっそりと閉店したコカのサヤーム・スクエア店
ひっそりと閉店したコカのサヤーム・スクエア店

バンコクの中心部にあり、常に大勢の人でにぎわうサヤーム・スクエアでは、再開発が進行中。巨大なビルが建ったり、タイスキの老舗コカのサヤーム・スクエア店が閉店したりと、いろいろな変化が見られました。お隣のMBK(マーブンクロンセンター)は、もともと外国人旅行者の多い場所だったこともあり、ツーリスト向けの雑貨や衣料品ショップはほぼ閉店して悲しい状態に。これをいい機会と考えたのか、2階にレストランを誘致して飲食フロアに転換すべく、大規模な改装工事中でした。建物の一画を占めていた東急はクローズし、DON DON DONKI(ドン・キホーテのタイでの名称)のバンコク4号店が入る予定です。

新規開通した都市交通に乗ってみる

新規開通した都市交通に乗ってみる
MRTバーンスー駅から国鉄バーンスー・グランド駅への連絡通路

2020年2月の取材を最後に訪れられずにいた間に、バンコクと近郊を結ぶ都市交通が3路線開業し、利便性が高まりました。鉄分高めの筆者は、もちろん試乗してきました。

長年タイを代表するターミナル駅だったフアラムポーン駅に代わり、間もなく開業するバーンスー・グランド駅。地上3階地下1階、ホーム数26面の巨大な駅です。ここから北と西の郊外を結んで運行しているのが、SRTダークレッドラインとSRTライトレッドラインです。

バンコク市街からバーンスー・グランド駅までのアクセスはMRTブルーライン。地下にあるMRTバーンスー駅から案内看板に従って通路を進むと、スムースにバーンスー・グランド駅の巨大な1階ホールに上がることができました。ところが、そこから先の詳しい構内案内が見当たらず、乗り場がわかりません。うろうろしていたら改札があったので、そこにいた警備員に尋ねてみました。
筆「すみません。切符売り場はどこですか」
警「どこへ行くのですか?」

どこへ行こうなどとは考えておらず、終点まで行くだけのつもりなので、行き先を聞かれてもとっさに駅名が出ません。
筆「試しに乗ってみようかと……」
警「どこまでですか?」

去年バンコク編の改訂で交通図を作り直した際作成した原稿を思い出し、終点の駅はなんだっけ……終点の駅は……
筆「タリンチャン! タリンチャンです!」
警「ではこちらへ」

警備員は先に立って歩き出し、少し離れた切符の自動販売機まで連れて行ってくれました。そこには国鉄の職員がいて、自動販売機の使い方をレクチャーしながら操作してくれ、無事切符(コイン型のトークン)をゲット。その職員さんに「あちらの改札から入って下さい」と言われて戻っていくと、先程の警備員がまた不案内そうな日本人らしき女性を連れて歩いてくるのとすれ違ってお互い笑ってしまいました。わかりやすい案内出しましょうよ。

ダークとライト両レッドラインの車両は日立製作所製
ダークとライト両レッドラインの車両は日立製作所製

タリンチャンはSRTライトレッドラインの終点。途中のバーンバムルー駅は、これまで陸の孤島のような場所だったアーティスティックなマーケット、チャーンチュイの最寄り駅となります。SRTダークレッドラインの終点はランシット。そのふたつ手前のドーン・ムアン駅はドーン・ムアン国際空港ターミナルビルと歩道橋で連絡しています。これにより、ドーン・ムアン国際空港から公共交通のみでバンコク市内まで出られるようになり、とても便利になりました。ちなみにドーン・ムアン〜バーンスー・グランド間の運賃は33バーツです。

もうひとつの新路線は全自動無人運転のBTSゴールドライン
もうひとつの新路線は全自動無人運転のBTSゴールドライン

こちらも新しく運転を開始したBTSゴールドラインは、BTSシーロムラインのクルン・トンブリー駅とクローン・サーン駅を結ぶ新交通システム。全線高架、ガイドレールの案内軌道をまたいでタイヤで走行する、2両編成の比較的小さな車両です。無人運転なので運転席がなく、最前部に乗車すればパノラマが楽しめる構造。駅はクルン・トンブリー、チャルーン・ナコーン、クローン・サーンの3駅。チャルーン・ナコーン駅は高島屋も入る巨大ショッピングモールのアイコン・サヤームと連絡しています。始発駅のクルン・トンブリーから乗車したところ、乗り合わせた乗客は全員チャルーン・ナコーンで下車してしまい、終点のクローン・サーンまで乗り通したのは筆者のみでした。改札から出る前に念の為駅付近の案内地図をぽつねんと眺めていたところ、オフィスから駅の職員が心配げな表情で出てきました。
職「どこへ行きますか? ここはクローン・サーンです。ここで降りるのですか?」
筆「はい、ここで降ります」

返事を聞いて安心したように微笑みオフィスへ戻っていく職員。なんて親切なんだと思いつつ、利用者がいないので単に暇だったのかもしれません。クローン・サーン駅最寄りの船着場から渡し船でチャオプラヤー川を対岸へ渡れば、シー・プラヤーの船着場。古い下町の町おこしが進行中の、おしゃれカフェが続々オープンするタラート・ノーイへ歩いてすぐです。

フアラムポーン駅。この眺めももうすぐ見納め?
フアラムポーン駅。この眺めももうすぐ見納め?

コロナ禍の間にぐっと便利になったバンコクの都市交通網。その便利さと引き換えに、なくなるものもあります。多くの旅人がここから北へ南へと列車で旅立ったバンコクのフアラムポーン駅。アーチ屋根が印象深いこの駅は、バーンスー・グランド駅開業に伴い、2021年12月26日で廃止される予定なのです。すべての列車はバーンスー・グランド駅発着となり、フアラムポーン〜バーンスー間の路線も廃止。駅一帯は再開発されてショッピングモールの建設が計画されています。ところが「駅の建物は博物館として残す」「駅の機能と一部ローカル列車も残す」などさまざまな説が乱れ飛んでおり、タイのことなのでなってみないとわからない状態です。一応もう乗れなくなる可能性があるので、フアラムポーン駅からバーンスーまで普通列車の3等座席でショートトリップを楽しみ、沿道の光景を目に焼き付けました。

注:12月15日に「フアラムポーン駅閉鎖は延期、12月23日から発着を近距離列車22便のみに減便、長距離列車はバーンスー・グランド駅発着に変更、レッドラインがフアラムポーン駅まで延伸されたら近距離列車の発着も廃して駅を本格的に閉鎖する」という報道がありました。

バンコクの今後は果たしてどうなる

バンコクの今後は果たしてどうなる
到着日1泊隔離ホテル客室のゴミ箱。まあ、そうなんですけどね
昨年完成したワット・パクナームの巨大仏像は高さ69メートル
昨年完成したワット・パクナームの巨大仏像は高さ69メートル

タラートロットファイ・ラチャダーやコカのサヤーム・スクエア店だけでなく、人気ニューハーフショーのカリプソが閉鎖したのは、ガイドブック担当者としてショックです。休業または廃業したホテルやゲストハウス、ショップも、歩いた範囲内でもいくつか見かけました。しかし、カオサン通りやMBK(マーブンクロンセンター)のように大規模な改装を行ったり、チャオプラヤー川沿いに高級ホテルが新規開業するなど、攻めの話題も聞こえてきます。昨年2月の取材時にはまだ未完成ながら巷で話題の図鑑シリーズ『地球の歩き方 W08 世界のすごい巨像』に掲載したワット・パクナームの巨大仏像も、今回足を運んだら無事完成していました。こちらも新たな見どころとなることでしょう。

タイへの入国は、規制が厳しかった頃に比べればだいぶ楽になりました。しかし日本帰国後は14日間の隔離があります。今回の旅では、オミクロン株の出現にともなう航空券の新規予約停止騒動(結局すぐ撤回)などもあり、帰国できるのか、フライトがキャンセルになったりしないか、帰国できてもホテル待機になるのか、なるなら何日なのかなど、いろいろ気をもむ事態となりました。一日でも早くコロナウイルスの感染が収束し、気兼ねなくバンコクを訪れることができる日が戻ってくれることを祈るばかりです。

こちらもチェック!

■【バンコク編の編集者が実地体験】タイ入出国とバンコクの町なかのリアル
・URL: https://news.arukikata.co.jp/column/travel-info/Asia/Thailand/BANGKOK/146_882608_1639120119.html?w=146

旅のバイブル「地球の歩き方」ガイドブック

やっぱりタイはおもしろい! バンコクで絶対やりたい15のことをピックアップ。必食グルメに買い物、インスタ画像もゲットできる最旬プランから、大ブームのナイトマーケットにパワースポット、人気エリアのディープな町歩きまで、タイを体感できる最強ガイドです。スパ&マッサージ、おみやげの最新情報も満載!

※当記事は、2021年12月16日現在のものです

TEXT: 『地球の歩き方ガイドブック バンコク』編集担当 編集工房緑屋 水野 純
PHOTO: 水野 純
 

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2021年12月16日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。

◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html

◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。

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筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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