石に刻んだ闘いの跡、フランス北部を愛した彫刻家ドデーニュ展

公開日 : 2019年06月14日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき
カヴロワ邸 ©Jean-Luc Paillé – Centre des monuments nationaux
カヴロワ邸 ©Jean-Luc Paillé – Centre des monuments nationaux

フランス北部クロワにあるカヴロワ邸では、2019年5月21日(火)から10月6日(日)までの期間、「ユージェヌ・ドデーニュ、石と木炭(Eugène Dodeigne, pierre et fusain)」展が開かれています。2015年に亡くなったばかりのユージェヌ・ドデーニュ(Eugene Dodeigne)は、フランス北部を代表する現代芸術家。その作品と経歴を紹介します。

青く硬いソワニエ石を好んだドデーニュ

青く硬いソワニエ石を好んだドデーニュ
「ユージェヌ・ドデーニュ、石と木炭」展ポスター

会場となるのは、アールデコの城かと見紛うカヴロワ邸。管理するのは、国立モニュメントセンター(Le Centre des monuments nationaux、以下CMN)で、今回の展覧会もCMNの尽力によるものです。

ユージェヌ・ドデーニュ(Eugene Dodeigne)は、1923年、ベルギー人の父と、フランス人の母の間に生まれました。生後4ヵ月の頃、フランス北部ムーヴォー(Mouvaux)に移り住みました。

12歳の時にはすでに石工だった父親のアトリエで、石の扱い方を覚えたと言います。一方、デッサンは、トゥルコアン(Tourcoing)の美術学校で習いました。20歳でパリの国立美術学校に入学を許されます。あちらこちらのギャラリーや美術館を見学したパリの生活。そこでのプリミティブ・アートとの出会いは、生涯にわたるインスピレーションをドデーニュに与えました。

1950年フランス北部に戻ってきたドデーニュは、ボンデュ(Bondues)に居を構えます。当初は、おもに木材を使った彫刻を手掛けていたドデーニュですが、やがて石を多く使うようになり、後には、ブロンズや冷えた溶岩なども使うようになります。けれども、もっとも好んで使ったのは、青みを帯びた硬い石灰岩、ベルギー南部ソワニエの石でした。

世界中で存在感を放つドデーニュの作品

世界中で存在感を放つドデーニュの作品
リールのレピュブリック広場、リール美術館前の噴水内にもあるドデーニュの彫刻 ©Kanmuri Yuki

基本的に屋外で制作したというドデーニュの作品は、サイズも大きなものがほとんどです。2015年にボンデュで亡くなるまでに制作された彼の作品は、今もパリのチュイルリー庭園のほか、世界各地で見ることができます。

ドデーニュが拠点としたフランス北部にはさらに多く、リール美術館をはじめ、町中、ヴィルヌーヴダスクのLaM現代美術館、ルーべのラピシーヌ美術館、ヴェール・ボワ城などで存在感を放っています。

「彫刻は戦い」「デッサンは彫刻の種」

「彫刻は戦い」「デッサンは彫刻の種」
『呼びかけ(L’appel) 』Eugène Dodeigne ©Natale Monorchio - Centre des monuments nationaux

彫刻は、「素材と感情との闘い」であると言うドデーニュにとって、「デッサンは、彫刻の種」でした。画材には木炭を好んだドデーニュのデッサンは、恐ろしいほど圧倒的な力強さを放っています。初めて見た時は、このエネルギーをして、あの硬い石を穿ち、重々しい作品を生み出したのかと、非常に感じ入る思いがしました。

今回のドデーニュ展では、彫刻8点、デッサン9点が、カヴロワ邸と共鳴するように展示されます。

『門(Porte Dodeigne)』 ©Natale Monorchio - Centre des monuments nationaux
『門(Porte Dodeigne)』 ©Natale Monorchio - Centre des monuments nationaux

北の巨人の足跡

北の巨人の足跡
『命(Vie)』 Eugène Dodeigne ©Alexandre Pouliguen - Centre des monuments nationaux

「ノール(北)は、その偉大な巨人の一人を失った」とは、2015年、ドデーニュの訃報に接し、リール市長マルティーヌ・オーブリー(Martine Aubry)が出したコメントです。

フランス北部へお寄りの際は、ぜひ、ノールの巨人の足跡を見にいらしてください。

いかがでしたか。フランス北部を代表する現代芸術家ユージェヌ・ドデーニュの作品と経歴を紹介しました。クロワにあるカヴロワ邸に立ち寄り、偉人の軌跡を辿ってみませんか。

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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