近現代美術の牙城ポンピドゥ・センターがまとめたキュビスム展(フランス・パリ)
美術館巡りや博物館巡りは、海外旅行の楽しみのひとつではないでしょうか。20世紀初頭、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックによって創始され、多くの追随者を生んだキュビスム作品となれば、なおのことでしょう。2017年にオープン40周年を迎えたジョルジュ・ポンピドゥ国立芸術文化センター(フランス・パリ)で開催中のキュビスム展を紹介します。
ポンピドゥ・センター
ポンピドゥ・センターは、その名の通り、美術館という一言では収まらないさまざまな顔をもっています。もちろん、ヨーロッパ最大の近現代美術コレクションで知られる美術館は有名ですが、それだけでなく、情報図書館、音響音楽研究所なども併設する近現代芸術の拠点です。
つまり、1907‐1917年に興った美術運動キュビスムをまとめるのに、もっともふさわしい場所のひとつといえるわけです。ちなみに、フランスでは、キュビスムに関する展覧会の企画は、1953年以来となります。
大きな視点からまとめたキュビスム
今回のキュビスム展では、時間軸に沿って、約300の作品が14のセクションに分けられて展示されます。
一般に、キュビスムは、パブロ・ピカソが1907年に描いた『アヴィニヨンの娘たち(Les demoiselles d’Avignon)』に始まるといわれます。伝統的な画法や美の定義を一切無視したこの絵は、実際、多くの画家によくも悪くも衝撃を与えました。
そのうちのひとり、ジョルジュ・ブラックが1908年に描きあげたのが、『大きな裸婦(Grand nu)』で、その後、ふたりの画家は共同でキュビスム探求を始めることになります。
セザンヌやゴーギャンの影響
この展覧会は、キュビスム誕生に多大なる影響を与えたゴーギャンや、セザンヌ、プリミティブアートの紹介から始まります。特に「円筒、球体、円錐によって自然を扱う」というセザンヌの有名な言葉は、キュビスムに大きな影響を与えたことで知られてます。
1909年頃ブラックとピカソが描いた一連の風景画や静物画には、その影響が如実にあらわれています。たとえば、ピカソの『テーブルの上のパンと果物入れ』では、オブジェをすべて円筒、球、円錐の形に還元しています。また、対象物を捉える視点がひとつではなく、複数であるというキュビスムの特徴もみえます。
革命的な形状の扱い
キュビスムのもっとも人の目を惹く特徴は、幾何学的な配置でしょう。また、当時は絶対的であったといってもいい古典的表現の一切を拒否したことも、内外に衝撃をもたらしました。今回の展覧会では、さらに、キュビスムに携わったアーティストらの根本に迫る探求心と創造のエネルギーが、現代美術の源泉となったことを詳らかにします。
そのほか、キュビスム運動を広く世間に知らしめるきっかけとなったアンデパンダン展出品を企てたピュトー・グループの画家たちの作品も多く展示し、文学とのかかわりにも触れています。
世界各国から集められたコレクションの数々
1914年、第一次世界大戦勃発により、ブラックは徴兵され、ピカソとの共同作業は終わりを告げます。戦地に赴いたキュビストも多いなか、中立国の国民であったピカソやグリスらは、パリにとどまり製作を続けます。
戦争の影響もあり、決して長くは続かなかったキュビスム運動ですが、その後、抽象画分野に受け継がれたりして、多くの支流を生みました。
展示は、絵画だけでなく、彫刻、コラージュの原型ともいえるパピエ・コレも含みます。これらの作品は、フランス国内のみならず、ヨーロッパ各国、ロシア、アメリカの複数の美術館、また匿名を希望する個人からも借り受けており、見ごたえのある展示となっています。会期は、2019年2月25日(月)まで。キュビスムの流れを体感できる展覧会です。
いかがでしたか。ジョルジュ・ポンピドゥ国立芸術文化センターで開催中のキュビスム展を紹介しました。フランス・パリまで、キュビスムの旅へ出かけてみてはいかがでしょうか。
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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