アポロの月面着陸から50年! 展覧会「月」をパリのグラン・パレで開催(フランス)
1969年7月、人類が初めて月面に降り立ってから、2019年で50年になります。月面着陸を記念し、フランス・パリのグラン・パレ(Grand Palais)で開催される「月 - 現実の旅行から想像の旅行まで(La Lune Du voyage réel aux voyages imaginaires)」を紹介します。会期は、2019年4月3日(水)から7月22日(月)までの予定です。
5つの視点から月を捉える
月は、太陽と並んで、人類にとってもっとも身近な天体です。簡単に肉眼で見つけることができ、煌々とした明るさは夜道を照らす友となり、その満ち欠けは複数の文明に暦を誕生させました。
また、その神秘的な美しさは、古今東西、人類を魅了し、神話を生み、宗教と結びつき、さまざまな祭事と関連しています。さかのぼれば、古代から現代まで、人と月の関わりは、実に長く続いているのです。
1)現実の旅行から想像の旅行まで
月と人の長い関係をさぐる今回のエキスポは、まず、1969年7月のアポロ11号月面着陸から始まります。当時の映像や写真で、月面着陸という全世界を沸かせた史実を事細かになぞったのち、時代をさかのぼり、文学作品や美術作品を通して、月との関わりを明らかにしていきます。
人類が長く焦がれてきた月ですが、こうして辿ってみると、おもしろいことに、現実に月に降り立ったあとも、その神秘性は失われていないように見えます。
2)月の観察
ネーデルランドで望遠鏡が発明されたのち、17世紀初頭ガリレオ・ガリレイの時代から、月の観測が始まりました。17世紀半ばには、最初の月面図が複数作成されています。
上は、そのうちのひとつ、ジョヴァンニ・バッティスタ・リッチョーリが1651年に作成したもの。ちなみに、17世紀終わりには、ジョヴァンニ・カッシーニがさらに詳細な月面図を作成し、これは、その後写真が発明されるまで重用されました。
3)月の持つ3つの顔
このセクションは、人が月に抱く3つの異なる印象を紹介します。
一つめは、優しく保護してくれ、インスピレーションの源となる月の顔。
実際、美しい月明りを描いた絵画には事欠きません。上は、月の女神セレーネ(あるいはディアナ)に見初められ永遠の眠りについたエンデュミオーンの元にセレーネが月光となって訪れる場面を描いたものです。
二つめは、満ち欠けを繰り返す月の移ろいやすい顔。
たとえば、フランス語では、月のことをlune(リュヌ)と言いますが、気分の変わりやすい人のことを、lunatique(リュナティック)「月的な」と呼ぶように、月は移り気なものの代表として捉えられることがあります。
そして、三つめは、狂気に通じる月の闇の顔。
同じものであるはずの月に、慈愛に満ちた表情を見る時もあれば、禍々しい存在と感じたり、あるいは気ままで信頼できないものと捉えることもあるというのは、考えてみれば不思議なことです。けれども、言いかえれば、それだけ月が身近な存在である証拠なのかもしれません。
4)月の擬人化
4つ目のセクションで扱うのは、月が古代から神と重ねられてきた事実です。
古代エジプトのトートやネフェルトゥム、またメソポタミアのシン、ヒンドゥー教のチャンドラは、男神として表現されていますが、ギリシア神話やローマ神話では、アルテミス、ディアーナ、セレーネー、ヘカテーなど、月は女神として現われます。また、キリスト教の世界では、聖母マリアが月光と関連付けられることもあります。
5)夢への招待
最後のセクションで扱うのは、インスピレーションの源としての月です。
ダリ、ミレー、ミロ、ライト・オブ・ダービーらの描いた月光のほか、ロダンの彫刻、またそれぞれの絵にふさわしい詩が展示されます。上の絵は、エドゥアール・マネの『ブーローニュ港の月光』です。
月の満ち欠けが謎ではなくなった現代においても、月に神秘的な何かを感じる人は少なくないように思います。古代からめんめんと人類を魅了し続ける月を、この機会に、さまざまな角度から見つめ直してみませんか。
いかがでしたか。パリのグラン・パレ(Grand Palais)で開催される「月 - 現実の旅行から想像の旅行まで(La Lune Du voyage réel aux voyages imaginaires)」を紹介しました。パリ滞在中に、ぜひ一度足を運んでみてください。
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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