八ヶ岳のふもとで、アートなひとときを。シルクロードに思いを馳せて~「平山郁夫シルクロード美術館」

公開日 : 2019年09月19日
最終更新 :
筆者 : 水月
「大シルクロード・シリーズ」が展示された2階の大展示室
「大シルクロード・シリーズ」が展示された2階の大展示室

八ヶ岳のふもと、山梨県北杜市長坂町にある「平山郁夫シルクロード美術館」を紹介します。平山郁夫画伯(1930~2009年)は、シルクロードを描き続けた日本画家です。やわらかな筆使いと深い色合いで描かれた絵画の数々は、いまなお多くの人々の心を魅了し続けています。日本から中央アジアを経てローマまで続く長い長い道、シルクロード。 砂漠を行くラクダのキャラバン。言葉や文化の違う人々が集まるオアシス。大草原に生きる遊牧民たち。平山画伯は、シルクロードに何を見て、何に魅かれたのでしょう。美術館をゆっくりと歩けば、おのずとそんな疑問も解けていくはずです。八ヶ岳高原の涼やかな風に吹かれて、雄大なシルクロードへ心の旅に出かけてみませんか。

コレクションの数、およそ1万点

コレクションの数、およそ1万点
入口を入ってすぐ、仏像などが並ぶ展示室

館内に入ると、まずは平山画伯がシルクロードを旅するなかで集めたコレクションの数々を観ることができます。コレクションの数はおよそ1万点。仏像、コイン、土器、布など、その多様性に、大陸を横断するシルクロードの広大さを感じます。

『仏陀説法図』には、周囲に多くの人が彫られている
『仏陀説法図』には、周囲に多くの人が彫られている

平山画伯は、上の写真の『仏陀説法図』のように仏像単体ではないものも積極的に集めてこられたそうです。周囲に描かれ彫られた人々を観ることで、その土地や時代の暮らしが見えてくると考えていたといいます。

ガンダーラの『仏陀坐像』
ガンダーラの『仏陀坐像』

これは、ガンダーラで発見された『仏陀坐像』です。ギリシャ彫刻にも似た彫りの深い顔立ちが特徴です。仏像はギリシャ文明の影響を受けて、ガンダーラで誕生したといわれています。平山コレクションは、優しい顔をしている像が多いと美術館の方が教えてくれました。一体一体を見つめて歩くと、心が解放され癒されていくように感じました。

企画展・没後10周年記念展を開催中

企画展・没後10周年記念展を開催中
前編の「群青の世界」の様子

順路を進むと企画展へ。2019年は、平山郁夫没後10周年記念展が開催されています。

『朧月夜ブルーモスク』(イスタンブール)
『朧月夜ブルーモスク』(イスタンブール)

企画展前編の「群青の世界」は、2019年3月9日(土)から9月10日(火)まで開催されました。展示室には、「平山ブルー」と呼ばれる独特の青で描かれた絵画が並んでいました。

こちらは、『朧月夜ブルーモスク』(イスタンブール)です。

企画展前編と後編のチラシ
企画展前編と後編のチラシ

企画展後編の「悠久の旅路」は、2019年9月14日(土)から12月27日(金)まで開催されます。『出現』『行七歩』などの初期作品、山梨県にゆかりのある日蓮を描いた『日蓮聖人画像』など、平山画伯の仏教絵画の世界を鑑賞することができます。

大シルクロード・シリーズ

大シルクロード・シリーズ
月明かりの下シルクロードをゆくキャラバンたち

2階の大展示室では、平山画伯の集大成「大シルクロード・シリーズ」を観ることができます。

カメラに収まらないほどの広さの大展示室
カメラに収まらないほどの広さの大展示室

真ん中の古代ローマ遺跡「エフェソス・トルコ」を中心に、砂漠を行くキャラバンの昼と夜の絵が左右対称に展示されています。太陽が照りつけるさなか、またやわらかな月明かりの下、砂漠を行き来するラクダのキャラバンたち。

平山画伯は、彼らの姿に、国境や民族を、さらには時空をも越えた人々の交流の〈象徴〉を見い出し、描き続けていたといいます。

心に沁みる「平山ブルー」
心に沁みる「平山ブルー」

シルクロードは、さまざまな文化が行き交う交流の道、そして仏教伝来の道でもあります。

15歳のときに故郷広島で被爆し、後遺症による死の恐怖に苦しんでいた平山画伯は、救いを求め玄奘三蔵の仏教伝来を描くことで、玄奘三蔵がたどったまだ見ぬシルクロードと出合います。

その後40年間で150回にもおよぶシルクロードへの旅を重ね、そこに日本文化の美の源流を見いだそうと描き続けることになったのです。

ミュージアムショップ&ワークショップ

ミュージアムショップ&ワークショップ
グッズが充実したミュージアムショップ

1階入口受付スペースにあるミュージアムショップには、平山画伯の書籍や絵葉書などのほか、おしゃれなグッズがたくさん並んでいます。

「民族衣装を着てみよう」コーナー
「民族衣装を着てみよう」コーナー

2階のカフェ「キャラバンサライ」では、お茶をいただきながら、DVDを鑑賞することができます。「民族衣装を着てみよう」「絵手紙コンテスト」など、文化やアートを体感して楽しめるコーナーも。

ここは、隣接するJR小海線の甲斐小泉駅から自由に出入りができ、入館しなくてもカフェのみの利用も可能です(入店のみの場合入館料無料)。そのほか、ワークショップやイベントなども定期的に企画されています。2019年9月28日(土)、9月29日(日)には「ワイン&クラフトフェスタ」が開催されます。

レストラン「亜絲花」でトルコ料理を

レストラン「亜絲花」でトルコ料理を
ログハウス風の建物は、平山画伯の別荘だったもの
木造りの落ち着いた雰囲気の店内
木造りの落ち着いた雰囲気の店内
「亜絲花」のスペシャルワンプレートランチ
「亜絲花」のスペシャルワンプレートランチ

美術館の隣りには、平山画伯の別荘を改築したログハウス風のレストラン「亜絲花(あしはな)」があります。フレンチの修行を積んだシェフによるトルコ料理(ランチ時)とフレンチ(ディナー時)を楽しむことができます。

写真の「亜絲花スペシャルワンプレートランチ」(税込1,500円)は、ワンプレートにトルコ料理のおいしさが詰まっています。左上から冷製ヨーグルトスープ、白インゲン豆のサラダ、鯖サンド、真ん中はひよこ豆のペースト、茄子の挽肉詰め、手前にはご飯、ケバブの串焼き、粒の大きなクスクス。スパイシーな香りが魅力的で、やさしく落ち着いた味わいでした。1,000円(税込)のランチプレートもあります。

すべての人に開かれた美術館

すべての人に開かれた美術館
「平山郁夫シルクロード美術館」の外観
館内に展示してある平山画伯の写真
館内に展示してある平山画伯の写真

この美術館の特徴であり魅力のひとつは、すべての人に開かれているということです。 小中学生は、入場無料。館内で美術品を間近に見ながら写生することも、写真撮影も(特定の展示物を除いて)OKです。

音声ガイド(税込500円)は、日本語、英語、中国語と3種類あり、とてもわかりやすくていねいに解説してくれます。多くの方に平山画伯が残したものを、観て、知って、感じて欲しいという美術館の方々の思いを感じます。

いかがでしたか。芸術の秋。八ヶ岳のふもと、「平山郁夫シルクロード美術館」でアートなひとときを過ごしませんか。

※2019年9月時点の情報です。料金やメニュー内容等は現在と異なる場合がありますので、事前に各施設へご確認ください。

筆者

山梨特派員

水月

2000年に山梨県北巨摩郡明野村(現 北杜市明野町)に移住。田舎暮らしを始めました。3人の子育て経験や女性ならではの視点、食いしん坊の資質を生かして、山梨の魅力を発信していきたいと思っています。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。